久しぶりの都内で(吉田幹太)

 東京都が週末の外出自粛要請を出したのが3月25日の水曜日。

 つまりはその要請が出た日からずっと東京都内に足を踏み入れてなかったわけで、先週、東北新幹線に乗るために東京駅を経由したのが約1カ月ぶりの都内。

 人で溢れかえっているはずの夕方の秋葉原や東京の駅構内はガランとして、山手線も十分に間隔を開けて座れるほどに空いている。

 東京駅ではほとんどの店のシャッターが閉まっていて、新幹線も自分の乗り込んだ車両には5人ほど。

 つくづく、ひどい事態になってしまった。

 緊急事態宣言が出る寸前までは、どこかでおおごとではないんじゃないかと考えていた。

 近くの店ならと言い訳しながら、いつものように数人で飲んだり食ったり。

 感染者の数も欧米のような増え方はしないはず。いずれは数も減ってくるはずだろうと。

 しかも、週中はほとんど美浦で過ごしてたりすると、いくらニュースで報道されても自分とは関係のない海外の話のようで実感がわかなかった。

 そんな自分でもさすがに危なさを感じてきて、ない頭で考えるようになったような気がする。

 やはり、こんな時だからこそ、人がどうこうではなくて、自分自身がしっかりしなければいけないのだろう。

 自分の行動を見つめなおすいい機会だと思えば、不安定な気持ちも多少は落ち着いてくる。

 東日本大震災があって、少しは危機感や頭を使って生きれるようになっていたのかと思っていたけれど、自分の現状を見るとそうではなかったようだ。

 無観客とはいえ競馬が休まずに行われていることの意味。

 主催者や厩舎関係者だけではなくて、記者の自分もちょっと真剣に考えたほうがいいのだろう。

 先週は残念ながらダービーが無観客で行われることが決まった。

 4コーナーを回ってくる時のあの大歓声がないのかと思うとぞっとしてしまうが、それでも他のスポーツを見れば日程通りに消化できるのはうんと恵まれているといえるのだろう。

 緊急事態宣言後は売り上げが軒並み前年比100%を超えるようになった。

 他のスポーツが中止している中で、自宅待機を余儀なくされている相当な人達が競馬を楽しみにしているのは間違いない。

 関係者が頑張るのは勿論だけれども、自分の立場でも無事に行われていることに感謝しながら、しっかりした情報をいつも以上に伝えられるように努力しなければいけないのだろう。

 予想に関していえば、頑張っているつもりでも裏目に出ることも……ある。

 それならばせめて、調教班である自分の場合は追い切りをちゃんと見て、馬の状態をしっかり判断したい。

 それがきっと自宅観戦しているお客さんのためになり、社会貢献にもなっているのだと信じて。

 加えては自分の懐が潤えばいうことなし。

 自分の真価が問われると思って、気合を入れてがんばります。

 まずは天皇賞か。

 いやいや、その前に土曜日の青葉賞。ここは関東馬でビシッと決めますよ。

美浦編集局 吉田幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。