ワールドカップ年の宝塚記念は(水野隆弘)

 

 今回のFIFAワールドカップは初めてtotoが発売されたのでコンビニでランダムな1000円のを買ってグループリーグを眺めた。簡単に当たらないことは承知しているが、万が一ということもある。1回目はちょっと楽しめた。しかし、2回目はドイツvsガーナがまさかの引き分けで対象試合初戦にして全滅という味気のないものであった。

 既出のネタというか、「競馬ブックG1増刊号」(西日本限定発売)のコラムでワールドカップのたびに書いているので自分でもまたかと思うが「ワールドカップの年の宝塚記念ではサッカーボーイ関連血統が強い」というのが今回のテーマ。アホみたいな話だが、これが馬鹿にできないのですよ。サッカーボーイは1985年生まれの父ディクタスFR、母ダイナサッシュ、母の父ノーザンテーストCANの栃栗毛の軽量級牡馬。何を今さらという方も多かろうと思うが、30年近く前の馬なので、その蹄跡を手短に振り返ってみる。8月の函館でのデビュー戦を9馬身差の圧勝劇で勝ち上がると、函館3歳S4着を経て、もみじ賞で2着に10馬身差をつけ、阪神3歳Sもダイタクロンシャンを8馬身差ち切って勝ち、関西のクラシック候補の大将格となった。春のクラシック戦線は弥生賞3着、皐月賞を回避してNHK杯4着、日本ダービー15着と裂蹄などの問題もあって不本意な成績に終わるが、調子を取り戻した7月の中スポ杯4歳Sでは旧中京の短い直線を追い込んで皐月賞馬ヤエノムテキを一蹴、続く函館記念では年長の日本ダービー馬メリーナイスやシリウスシンボリを問題にせず5馬身差で圧勝した。2000m1:57.8は当時の日本レコードだった。秋を迎えてのマイルチャンピオンシップは後方から漸進して3~4角で中団に上がると、4角手前ではスルスルと4番手まで位置を上げ、直線は楽々と走って前を捉えたかと思うと2着のホクトヘリオスにゴールでは4馬身の差をつけていた。後のタイキシャトルも強かったが、マイルチャンピオンシップを史上もっとも楽に制したのはこの馬ではないかと思う。全身バネというのか、鹿の類のような軽さを感じさせる走法でありました。

 ここから本題。1998年のフランス大会は日本代表がワールドカップに初出場を果たした年で、7月12日の宝塚記念の日に決勝戦が行われている。ワールドカップにどこが勝ったのかは忘れたが、宝塚記念はサイレンススズカが逃げ切り勝ちを収め、それに3/4馬身まで迫ったのがサッカーボーイの全妹ゴールデンサッシュの仔ステイゴールド。エアグルーヴにクビ差先着しての9番人気での好走だった。

 2002年(日韓大会)。ダンツフレームの2着に追い込んだのは4番人気のツルマルボーイ。これは母の父がサッカーボーイだった。父がダンスインザダークというせいもあったのかなかったのか、その後は惜敗が続いたが、2004年にはパート1G1に認定されたばかりの安田記念を鮮やかに差し切っている。

 2006年(ドイツ大会)は京都競馬場で行われた。ディープインパクト断然の年で、これが独走して4馬身差の順当な勝利を収め、2着に入ったナリタセンチュリーが10番人気だったにもかかわらず、馬連は1920円の小波乱に終わった。ただ、3着に9番人気のバランスオブゲームが食い込み、3連単を43,850円に押し上げている。このバランスオブゲームがサッカーボーイの全妹ベルベットサッシュの孫だった。

 2010年(南アフリカ大会)。この年はドバイから戻ってヴィクトリアマイルG1でクビ差惜敗していたブエナビスタが1番人気。しかし、勝ったのはステイゴールド産駒のナカヤマフェスタ。8番人気での勝利だった。秋には凱旋門賞G1に遠征してワークフォースとアタマ差の接戦で2着に敗れた。ステイゴールド産駒の凱旋門賞適性(?)を最初に示したというか、タラレバを言えば左にもたれるワークフォースが先に抜け出したあとから内を突く展開になっていれば着差が着差だけにどうなっていたか。あれは本当に惜しかったなあ。

 このようにワールドカップの年はサッカーボーイ関連の血統が必ず馬券に絡んでいる。理由は分からない。実際には、2003年にサッカーボーイ直仔ヒシミラクルと前述のツルマルボーイのサッカーボーイ血統ワンツーがあったり、直近5年のうち4回ステイゴールドが勝っていたりでワールドカップは関係ないのではないかという疑いもないではないが、細かいことには目をつむるべき場合もある。そういうわけで、今年のサッカーボーイ関連血統といえばステイゴールド産駒のゴールドシップ。連覇の可能性は高いのであろうと思う。しかし、実はもう1頭サッカーボーイが隠れている。フェイムゲームはバランスオブゲームの半弟。つまりサッカーボーイの全妹の孫にあたる。父はこの春破竹の勢いを示すハーツクライ。人気もないので3連系の穴として一考をお奨めします。

栗東編集局 水野隆弘