10月6日(火)から東西のトレセンでは競走馬が調教時に着用するゼッケンが一斉にリセット。緑ゼッケン(緑地に白字)だった2歳馬は黒ゼッケン(黒地に白字)に変わり、黒ゼッケンだった3歳馬は古馬と同じ白ゼッケン(白地に黒字)へと変わった。調教班には年1度の大きな区切り。前週までに2歳用と3歳用の2冊を用意し、コンマ1秒でも早くゼッケンを確認できるように見開き1ページ200頭分に1枚のインデックスをびっしりつけ、1年間のハードな扱いに耐えられるようにと見た目構わず(私だけ?)四隅をガムテープで補強して、新しいシーズンに備えるのがルーティーンだ。今年も準備万端、水曜早朝にいざトレセンに向かったが、あらら、ゼッケン表が2冊ともかばんに入っていない。リモートワークが定着し、徒歩通勤も増えて、かばんの入れ替えが増えたから……とこれは言い訳です。
が、しかし。調教が始まるとどの馬かまったく分からない状況に非常にメリットがあることが分かった。私の場合、姿を確認するとすぐにゼッケンを見て、どの馬かを認識したうえで、情報をインプットするのが流れ。これが先入観、固定観念を生むことにはここ数年でうすうす気づいていたが、長年染み付いた習慣はなかなか消えないもの。いい機会だと、まずは何か分からない馬をじーっと観察することにしてみた。マインドフルネスの集中に近いのではないか。頭のなかで、体の造りが重い、トモがついてこないとか、なめらかな推進、体のバランスがいいなどなど……まるで実況中継のように語句が浮かんでくるので、それを時間が許す限り書き留める。先入観のない観察は見たままがストレートに入り、強い馬にも欠点が、弱い馬にも強調点があることが明確に。また、1頭につき、2つや3つほど感想が増えていることにも気づく。実績を切り離して自分の感覚だけでジャッジするのはとても気分がいい。
翌日木曜からはもちろん、ゼッケンを持参して臨んだが、馬が馬場から去ったタイミングで馬名をチェックするのが新しいマイルール。つまり、馬が馬場にいる間は、先入観なしで、どんな体か、どんな気性か、どんな動きとひたすら見たままを記憶するのだ。ゼッケン番号を通して、これまで固定観念にとらわれて観察していた馬たちにごめんなさいと謝罪。今後はゼッケンを覚えない主義でいきます。
栗東編集局 山田理子
水、木曜のトレセンでは障害コース、Bコースを採時。障害競走の魅力を伝えられるよう日々観察しています。