射程に収めた鉄人の記録(坂井直樹)

 こんにちは、障害戦大好き、栗東の坂井です。

 先週土曜の阪神競馬第1Rで、1番人気のムーンレイカーが本来ダートコースへ入るべきところで障害コースへ逸走する場面がありました。落馬した場合の再騎乗は2017年1月1日からルールの国際調和および騎手と馬の保護の観点から禁止となりましたが、逸走の場合は、逸走した地点に戻ることで競走を続行することが認められています。ムーンレイカーは逸走した4角へ戻り、勝ち馬から64秒9遅れた最下位で入線、完走を果たしました。人気を背負っていただけに結果は残念ですが、人馬無事だったのが何よりで、珍しい記録となりました。

 障害戦の記録という点で今、私が注目しているのは熊沢騎手です。熊沢騎手は1968年1月25日生まれの53歳。平地・障害双方で200勝を達成しているJRA史上唯一の騎手で、大がつくベテラン。キャリアを考えればいろんな記録を作っているであろうことは容易に想像できます。ケンホファヴァルトとのコンビでは昨年暮れの中山大障害に続き、先日の中山グランドジャンプでも2着。人馬とも完走するだけでも体力をかなり消耗しそうな中山の大障害コースでバリバリに活躍している姿には感動すら覚えました。

 そこで気になったのは「中山の大障害コースの最年長騎乗記録って何歳なのだろう」。ベテラン障害ジョッキーといえば、真っ先に思い浮かぶのが2008年に引退された嘉堂信雄さんですが、さて他に上がいるのかどうか。ひょっとしたら、もう熊沢騎手が更新しているかもしれない、と。

 嘉堂信雄さんが最後に中山の大障害コースで騎乗したのは2006年の中山大障害(メジロアービン・競走中止)。1953年7月28日生まれの嘉堂さんは、当時53歳と5カ月弱でした。今年の中山グランドジャンプでの熊沢騎手は53歳と3カ月弱。順調に年末の中山大障害で騎乗することになれば、この記録を抜くことになります。ではこれ以上の最年長記録はどうでしょう・・・と調べると、障害戦に限らず、JRAでは53歳以上での騎乗記録がそもそも少ないようです。

 

◎騎乗時年齢の記録(敬称略、★は現役)
【56歳】 
 岡部幸雄
【54歳】
 増沢末夫
 嘉堂信雄
 柴田善臣★
【53歳】
 大崎昭一
 安田富男
 坂井千明
 安藤光彰
 小牧太★
 熊沢重文★
 横山典弘★

 

 53歳以上で障害戦で騎乗経験があったのは嘉堂信雄さんと熊沢騎手だけでした。中山大障害の最高齢騎乗記録更新へ、さらには障害戦における最高齢騎乗記録(54歳3カ月)の更新へ、ひそかに注目しています。

栗東編集局 坂井直樹

坂井直樹(調教・編集担当)
昭和56年10月31日生 福岡県出身 O型
2004年入社。退職された山田理子さんから引き継ぎ、この春から関西主場の障害戦の本紙予想も担当しています。調教も実戦も、今まで以上に熱を入れて注視しています。ちなみに、これまで見てきたなかで一番好きな障害馬はノーザンレインボー。