このリレーコラムも夏から新規加入者が増えたことによって私の順番も前回から随分と時間が経ってしまった。この間にいろいろなことが起きた。開催前は不安もあったオリンピック・パラリンピックは無事終了したが、同じタイミングでデルタ株の影響により新型コロナ5波の流行が広がって東京でもこまれでにないくらいの多くの感染者が出た。首都圏での競馬開催こそなかったが、移動手段の新幹線に乗車するためにはどうしてもターミナル駅を通過しなければいけない。見えない敵に怯えながら週末の出張をこなしていたが、夏の新潟開催も残り1週となったところでついに身近なところから感染者が出てしまい、自分も接触の可能性があるということで急きょPCR検査を受けることに。幸いにも陰性の判定が出たが、万全を期して1週間はリモート取材。今の社会情勢から仕方のない事だが、対面での取材が基本だけにいつものような感触を掴めず、消化不良に終わったのは否めなかった。時を同じくして中央競馬騎手でも丸山、江田照両騎手の感染が判明して2週間、騎乗を自粛することになった。これまでも頭の中でコロナの脅威は分かっていたつもりだったが、身近な人に感染者出ることによって改めて他人事ではないと感じた。同時に何故検査にあれだけの費用がかかるのか?何故陽性と分かってもすぐに治療してもらえないのか?という疑問も湧いた。

 先週は例年、この時期に設定されいる3日競馬だった。今年も土、日にかけて台風の接近が心配されたが、幸いにして初日の土曜に大雨が降っただけで開催には影響がなく、スケジュール通りに進み、最後の月曜の朝を迎えてホッとしていた矢先、想定外の出来事が起きた。1Rの障害未勝利戦の勝因取材のためにいつものように検量室前で待っていたが、1着の高田騎手がなかなか出てこない。3分を超える長丁場で体力を消耗し、パトロールフィルムで振り返るにも時間を要するので障害戦の取材に手間取るのはある程度、覚悟しているのだが、レース後、30分近く経って2Rのスタート直前になってもまったく姿を見ないのだから異常だ。すると3着馬に騎乗していた北沢騎手が「高田騎手は倒れていて、医務室の先生に診てもらっている」と教えてくれた。マスコミは検量室の中までは入れないのでガラス越しに様子を窺うと起き上がる雰囲気はなく、そのまま担架で運ばれて行った。翌日になってくも膜下出血を発症していたことが判明。発見が早かったこともあって大事には至ってないようだが、一日も早い復帰を願うばかりだ。

 通常であれば日曜の競馬が終わって1日置いて火曜の夜に美浦移動となるところが、頭を冷やす間もなく21日夜に気もそぞろでクルマを運転していたが、ふと空を見上げると満月が輝いていた。今年はタイミングよく中秋の名月と満月が8年ぶりに重なったという。ここに来て新型コロナの新規感染者は下火になっているし、私も2回目のワクチン接種を近々、終える予定。油断はできないが、あとはいい知らせを聞くだけと願いを込めて来週からのGⅠシーズンを迎えたい。

美浦編集局 田村明宏

田村明宏(厩舎取材担当)
昭和46年6月28日生 北海道出身 O型
GⅠ2勝を含めて現時点で関東リーディングを快走している手塚厩舎。今週のメイン、オールカマーも管理馬、ウインマリリンが人気を集めているが、注目したいのはもう一頭のセダブリランテス。1週前の調教ではセントライト記念勝ちのアサマノイタズラに並ばせなかったし、今週はシュネルマイスターと互角に動いた。9月22日の今日が誕生日の鞍上石川裕騎手も「状態に不安はないです」ときっぱり。