マーチSのあった日曜日はまだかな~と思っていたら、月曜日の昼にはもう満開。季節の変わり目はあっと言う間にやってきて、気分も体も軽くしてくれた。

 先週はひどい状態だった。今年に入ってから2回目の風邪を引いてしまった。土日の競馬場は更に重みを増した体にムチを打ち、冴えのない頭はますます回転が鈍くなっていた。結果は推して知るべし。多少の負けで済んだことは奇跡のようにさえ思えた。
 月火の休みも万年床で唸りながら過ごした。外は春を感じさせる陽射し。聞こえてくる騒音でさえ弾んでいるように感じられる。自然と外出したくなるような陽気なのに、まったく外へ出ようという気にならない。思えば、毎年、こんな風にして、せっかくのいい季節を台無しにしてしまう。

 今季こそは風邪を引かないようにと細心の注意をしていたはずだった。毎回、風邪を引くと持病の喘息と微妙に影響しあい、その結果、おおごとになってしまうのだ。扁桃腺がはれやすく、熱よりも何よりもまず呼吸が怪しくなる。酸欠に近いような状態になり、動きは鈍くなって、顔色も極端に悪くなる。その結果、周りにも必要以上に心配をかけてしまうことになっていた。

 40歳も半ばになればこれくらいの自己管理ができなければとの思いもあった。若手に対してのしめしにもならない。ひそかに健康維持の対策を自分なりに練って、新年から実戦に移していた。もっとも、その対策はといえば怪しいなと思ったら早目に風邪薬を飲むようにすること。薬に頼ること自体に問題はあるかもしれない。それでも、これが思いのほか効果覿面だったのだ。例年、冬の初めに体調を崩していたのに、今季はすべて押さえ込むことができた。これはいける、もう風邪は大丈夫だと、妙な自信が沸いてきたのである。
 これが油断につながったのは間違いないだろう。1月に風邪を引いたときは、これくらいなら大丈夫だと薬を飲まずに眠ってしまった。翌朝、目が覚めると喉がひりひりとして、あの妙な悪寒が襲ってきた。結局、まるまる2週間は唸りながら過ごすことになり、予定していた宴会や人と会う都合なども延期してもらい、知り合いの方々には相当な不義理をしてしまった。
 果たして、年明けからそんなことがあったのに、3月に今季2回目の風邪を引いてしまった。しかも、今回は寒暖の激しい所を行ったりきたりする旅のあと。怪しい、気をつけようと思っていたのに、肝心の薬を切らしていて飲むことができなかった。自己管理どころか薬の管理もできていなかったのだ。

 東京都内や中山競馬場のある千葉県は桜が咲き乱れている。普段はぎすぎすしているように映る町並みも、この時期だけは穏やかで、おとぎ話の世界の中にいるような気分になってしまう。そして、馬が一番美しく見えるのもこの季節ではないだろうか。

 センバツ高校野球は終わってしまうけれども、プロ野球が始まって、来月には相撲も東京に帰ってくる。何よりも競馬はこれからが一番面白い季節。こんなに興奮する季節に、体調が伴っていなければ馬券が取れないのは勿論、喜びも楽しみも半減してしまう。

 ただただ、無駄に年齢と体重ばかりを重ねていては芸がない。今までの失敗を糧にしなければ情けないじゃないか。体調面に関しては必要以上に臆病になってもいい。そこで少しくらい人に迷惑をかけたとしても、体調を崩せばもっと人の世話になってしまうことになる。

 今季とはいわず、今年一杯は風邪を引かないようにする。

 今まで以上にいい時間を過ごすために、少ない知恵を搾り出して使わなければ。この2週間、そんなことばかりを考えなら過ごしていました。

美浦編集局 吉田幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。