今年も例年通り、3月1日から新人騎手がデビュー。関西が三人で関東は一人。関東でただ一人というのは少し寂しいが、近年の若手騎手を取り巻く状況を考えるとやむを得ない面もある。ただ、今年に限って言えばこれまでと違うのは二人の外国人騎手がJRA騎手としてデビューしたこと。短期免許を取得してから10年以上は経つ、誰でも知っているM.デムーロ騎手とルメール騎手の二人だ。既に十分過ぎるほどの実績を残している二人に対して改めて試験を課すことの是非に関してここでは問わないが、我々にとって現実的に問題になるのはこれまで通訳の方を通して取材していたレース後のコメントをどう取るかだった。グローバル化の時代なんだから英語なんか話せて当然、と言うのは簡単。普段から怠惰な生活をしているだけに突然、状況が変わっても対処できない。まして主催者としても日本語でのコミュニケーションが可能と判断しての免許交付だけに常時、通訳を介してというのでは筋が通らない。幸か不幸か通常は関西を主戦場としている騎手だけにデビュー直後は重賞勝ちのインタビューをテレビ映像で微笑ましく見えているだけで済んだが、ついにその日がやってきた。
 M.デムーロ騎手が3月21日のフラワーCに合わせて中山に遠征してきたのだ。これまでも英語か母国語での会話を聞いていたはずだったが、日本語でじかに会話をするのは実質、初めて。果たしてどうなるのか?だが、多少の戸惑いこそあったが、案ずるより産むがやすしで全体のニュアンスは理解できたつもり。それよりこちらが感じたのは何とか思い考えを伝えたいという姿勢と彼の声のキーの高さだった。それは吹き替え映画で見ていた海外の俳優の声が字幕映画で見ると意外に甲高い声であると感じるのと似たようなものか。むしろそこに初々しさを感じずにはいられなかった。二人に続く騎手が現れるのかどうか分からない。ただ、これまではあくまでも期間限定でしか見られなかった騎乗振りを通年で見られることに新たな喜びを感じる。

美浦編集局 田村明宏

田村明宏(厩舎取材担当)
昭和46年6月28日生 北海道出身 O型
今週、日曜は二人の外国人騎手がそろい踏み。皐月賞ではルメール騎手が騎乗するサトノクラウンが人気を集めそうだが、注目は同じオーナーで最終レースに出走を予定しているサトノアラジン。未完の大器と言われ続けているが、ここから成長軌道に乗りそうだ。