中学時代に所属していた「旅行研究クラブ」。時刻表を見ながら、限られた時間でどこまで行って帰ってこられるか。そんなことをひたすら調べるだけのクラブで、確か特に競うようなことはなく、勝手に調べて、発表もしていたのかどうか記憶がない。それでも、案外、人気のクラブで、すごく楽しかった。

 今週の宝塚記念が終わると競馬もひと区切り。前半戦を振り返ると美浦からは久しぶりに二冠馬が登場。トレセンには普段はこない取材陣も大挙して押し寄せて、GIシーズンらしい盛り上がりがありました。
 自分自身も例年より勝ち負けにかかわる馬の記事を書くことが多くなり、仕事面では充実したシーズンだったといえるかもしれません。その反面、肝心の馬券の方はサッパリで……。スカッと儲かった記憶は一切ないけれど、一日、まったく当たらなかったのは2日や3日ではすまなかった。例年以上につらいシーズンでした。

 7月からは関東の競馬は福島に移って、本格的に夏競馬が始まります。場所が変われば流れも変わる、ではないですが、悪い流れを変えるのにこれほど都合のいいことはありません。更に週末だけとはいえ、つかの間の出張生活も待っています。移動の時間を鬱陶しく思う人もいるけれど、自分の場合はチケットの手配をするだけでもうれしくなってくる。夏競馬は気分転換そのものです。

 時刻表を調べるのは得意ではなくても、楽しくて仕方がない。速くて空いてそうな列車を選び、その列車に乗るまでにどこで弁当を買おうか、そしてどのあたりで食べるか。それにはどの席あたりがちょうどいいか。ちょっとした時間には常にそんなことを考えて、すぐに調べたりしています。

 現地に着けば、夜の食事をどこにするか。帰りのお土産をどうするか。食べることばかりではありますが、それも旅行の楽しみのひとつ。仕事や暑さでぐったりすることがあっても、あとの楽しみがあれば乗り切れる。そんな風に思いながら毎年、夏の出張を有効かつストレスを溜めずに過ごせるようにしています。

 さて、馬券でまとめて儲かった時に何をするか。人それぞれだと思います。まとまった物を買って思い出の品を残すのはいい手かもしれません。その日のうちにパーッと飲んでしまうのもなかなか楽しそうだ。しかし、大抵はそのまま馬券に注ぎ込んで、いつの間にかなくなってしまうものかもしれません。自分の場合は実際にどう使うかは別として、まず最初に考えるのは、これだけのお金があればどこへ行けるかということ。

 これも昔のクラブで培ったことが、体に染み込んでしまっているのか、そもそもその素養があっただけの話なのか。原因はともかく、儲かると急に航空会社のサイトや旅行会社のサイトにつないで、あれこれ調べてしまう。休みの日を使ってどこまで行けるのか、温泉つきのホテルなどに泊まると大体どれぐらいの予算が必要なのか。遠くの友人に連絡を取って、どこで落ち合えるかなどの話をつけて、どんどん予定を立てていく。そんなことをひたすらしているのが楽しくて仕方がない。

 放浪癖は年々薄くなってきたような気はしますが、いまだに年に4、5回は旅行に出かけることがあります。落ち着きがなく、常にふわふわとしている自分の本質が、ここまで独身、負け組である原因のひとつかもしれない。そんなことをふと感じたりもすることはするのですが……。

 先日、早速、福島行きのチケットを手配して、週末の食事の予約も完了。いつもの生活もこれをするだけで張りがあるというのか、楽しくなってくる。あとは馬券をしっかり儲けて、復興支援のために現地でパーッと消費するだけ。
 やっぱり、自分は一生、さまよいながら生きるのかもしれません。

美浦編集局 吉田幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。