小社のWEBコラムで、「初障害ジャッジ」(関西馬)を書き続けているが、果たして的を射ているのだろうかと心配になる。いつもの記者席のスタンドから同じように観ているだけでは観察の幅はさして広がらないだろう。知らない事は気づかないままだからだ。引出しを増やさないといけない。騎手や関係者に取材するのはとても重要だし、それと並行して専門書も読まねばと常々思っている。
 昨年、「メカニズムから理解する馬の動き」という本(Gilian Higgins, Stephanie Martin 著、青木修監訳、石原章和翻訳、緑書房発行)を2月の発売後ほどなくして購入した。タイトル通り、馬の動きのメカニズムが分かりやすく解説されていて、実馬にリアルな骨や筋肉が描かれた写真はとても貴重で芸術品のように美しい。そのなかで、「馬はどのように飛越するのか」―解ぼう学的な見方―という項目があり、アプローチ、踏み切り、サスペンション期、着地、リカバリーの5つの段階が各2ページ都合10ページにわたって解説されている。何と贅沢な。正確にインプットするには、アウトプットする機会があったほうがいいので、今年はこのコラムで内容を記してみることにする。理解が深まれば、きっと障害レースが楽しくなるはず。難しくならないよう、長くならないよう、簡潔にいきたい。

 まずは序章

 馬の飛越能力は、体のつくり、解剖、体さばき、技術、訓練によって決まる。馬は優れたアスリートだが、本質的に飛越を好む動物ではない。頭が大きく、腹部が重く、比較的硬直した脊髄を持つからだ。うまく飛越するためには、踏み切りまでに力を貯めて、体のすベての部位が障害物の最高点(=飛越の最高点)を通過できるほどの放物点を描けることが必要。筋肉が鍛えられ、四肢が強くパワフルであり、肩甲骨を十分に後方に傾け、肩を持ち上げたり前脚をたたむ動作を円滑に行わなければならない。
 飛越は複雑な動きと反射パターンからなり、リズム・テンポ・推進力・バランスが重要。これらを確立するには長い時間がかかり、適切な調教と規則正しい練習を繰り返すことで、まるでオートマチック車に乗るように、馬の体は自然に動くようになる。 以上。
 次回は「アプローチ」について。馬術競技と障害競走の違いがあるでしょうし、実際の障害練習風景と競馬の様子を踏まえて自分のなかで消化し、私自身の考え・感想も交えながらお伝えできるよう備えます。

栗東編集局 山田理子

山田理子(調教・編集担当)
昭和46年6月22日生 愛知県出身 B型
水、木曜のトレセンではCWをお手伝いしながら障害コース、Bコースを採時。日曜は隔週で坂路小屋へ。調教時間が何より楽しく、予想で最重要視するのは数字よりも生身の馬の比較。人気薄の狙い馬、危ない人気馬を常に探している。09年より関西障害本紙を担当。週刊誌では15年より新たに「注目新馬紹介」のまとめ役を引き継ぎ、新馬の観察に一層力が入っている。