夏競馬、真っ盛り。というわけでGⅠもスプリンターズSまではしばらくお休み。ですが、折角なので時を戻そう(byぺこぱ)と、今回は春のGⅠの検量室の様子をお届けしてみたいと思います。この春は人員の都合もあり、中山GJ、皐月賞、ヴィクトリアマイル、オークス、日本ダービーのレース後の検量室取材を担当させていただきました。コロナによる規制もあり、現在、検量室取材は人数を絞って行われており、入室して聞けるのは数人に限定されています(その数人で手分けして聞いています) ありがたいことに、そのいずれも最前列にて直接話を聞かせていただきました。とりわけ、今回はヴィクトリアマイルとダービーに絞って振り返ってみたいと思います。

 

 【5月15日 第17回ヴィクトリアマイル】

 ご存じソダシの復活劇となり大変盛り上がりました。

 検量室に入り、真っ先に現れたのは勿論、優勝した吉田隼人騎手。タフな競馬だったんでしょう。「隼人さん、おめでとうございます!」というこちらの呼びかけに「いやー、疲れたー(笑)」と第一声。とはいえ、当然その表情には充実感が溢れており、テレビ用のインタビューに向かうために検量室を後にしました。

 

 そこに来たのがローザノワールで大波乱を演じかけた田中勝春騎手。「勝春さん、惜しかったですね!やったかと思いましたよ」と言うと、「なー、俺もやったかと思ったよ。もうちょっとだったんだけどな(^^)」と、いつものカッチースマイル。「でも、マイルでも自分の形だと本当渋太いね」と敗れはしましたが、こちらもよくやったという表情を浮かべていました。

 

 次に現れたのがミスニューヨークのデムーロ騎手。「思ったよりも瞬発力がなかったね・・・」と肩を落としていたので、「もっと雨が残れば良かったですね?」という問いに「あー、それはあるかもしれないね」と賛同してくれました。

 

 「舞台が合わなかっただけ。コーナー4つのコースならこのメンバーでもやれそう」と松岡騎手がクリノプレミアムに手応えを感じれば、「この距離は半信半疑だったんですが、馬の根性に助けられました」と愛馬を労ったのがレシステンシアの横山武史騎手。

 

 そして別の記者が別の騎手に応対中、ひとり待つ私のもとに寄ってきてくれたのが松山騎手でした。「1年以上休んでいたのに、本当に馬がよく頑張ってくれました。携わってくれたすべての人に感謝したいです。これを機に、またこの馬と一緒に歩んでいきたいですね」・・・デアリングタクトは個人的にも好きな馬ですし、あの本馬場入場での大歓声、ターフに帰ってきた姿には胸を熱くさせられました。そこにこんなひと言を独り占めして聞かせてもらい、仕事中にも関わらず、思わずグッときました・・・。私にとっても忘れられないレース、忘れられない検量室取材になりました。

 

 「凄い脚を使ってくれましたよ」とちょっと興奮していたのがアブレイズの菅原明良騎手。アカイイトの幸騎手も「慣れればマイルでもやれそうですよ」と今後の可能性を語ってくれました。アンドヴァラナウトの福永騎手は「完璧に乗ることができなかった。外を回る形になってしまった」と悔しい表情を浮かべていました。

 

 ちなみにこのヴィクトリアマイル。なかなか検量室を出てこなかったのがルメール騎手と池添騎手でした。前者のファインルージュは直線で、後者のソングラインは3コーナーでいずれも躓く場面。何度もパトロールビデオを見直しており、悔しさが伝わってきました。しかし、この悔しさをバネに池添騎手が3週間後に大仕事をやってのけたのは、もう皆さん、ご存知でしょう。

 

白毛の女王 ソダシが復活の勝利
ヴィクトリアマイル 白毛の女王 ソダシが復活の勝利

 

 【5月29日 第89回東京優駿 日本ダービー】

 武豊騎手が6度目のダービー制覇を成し遂げました。それにしてもドウデュースの仕上がりは素晴らしかったですね。別の馬を本命にしていた私もパドックで見て、「今日はドウデュースにやられそう・・・」そう覚悟しました。

 

 勿論、検量室に帰ってくるなり、「おめでとう」「おめでとうございます!」と声をかけられる武豊騎手。そんなダービーで「直線に向いた時も余力があったのでワンチャンあると思った」と色気が出ていたのがアスクビクターモアの田辺騎手。改めて見返してみても納得の走り。直線で手に汗握ったファンの方も多かったのではないでしょうか。「皐月賞の敗因を糧に(上位陣を)どう逆転するかを先生と何度も話してきた」と、そこから丁寧にレースを振り返ってくれました。田辺騎手、皐月賞の後もダービーの後も、聞いていてこの馬に熱が入っているのを感じます。秋の大仕事を期待したいですね。

 

 早めに我々取材陣の前に来てくれたのはジャスティンパレスに騎乗したデムーロ騎手。「頑張りました」と第一声。「いいところにつけられて、直線に向くまでは良かったんですけどね。半ばで止まってしまいました。残念」と。

 

 皐月賞はいずれもゲートで後手を踏んでしまったデシエルトとキラーアビリティもこの日は五分のスタート。「今やりたい競馬はできた。まだまだ粗削りだけど、内容は皐月賞より今回の方が良かったよ」と岩田康誠騎手が言えば、横山武史騎手も「課題だったゲートはクリアできたし、折り合うシーンも作れて、今後につながる競馬ができました」と秋の飛躍に期待していました。

 

 またひとり待つ私のところに寄ってきてくれたのが、お待ちかねオニャンコポンの菅原明良騎手(絶対直接聞こうとマークしていました笑)「えーと、何でしたっけ?」とさすがに興奮冷めやらぬ様子。「落ち着いて、ひと呼吸入れてからでいいから」と、2人で検量室内のパトロールビデオを一緒に見ながらレースを振り返りました。「・・・はい。上位に来た馬と同じような位置で運べていたので、位置取りとしては良かったと思います。2400mはどうかなと思ってはいたんですが、この馬も終いはしっかりと脚を使って踏ん張ってくれたし、よく頑張ってくれました」と落ち着きを取り戻すように言葉を選んでくれました。デアリングタクトの松山騎手ではないですが、これだけ注目を浴びていた馬の話をまた独占してしまいました。

 

 そして次のレースに向かう前に話を聞けたのがジオグリフの福永騎手。「取りたいポジションが取れず、前に馬を置く形が取れなかったです。体力を温存できた馬と、できなかった自分の差がラスト200mで出ました。馬の状態は凄く良かったですし、道中ためが利けば違うと思います。決して今日だけで距離が長いと結論づける必要はありません」と悔やみながらも、今後の可能性についても言及してくれました。ジオグリフは次走が秋の天皇賞と発表されていますが、福永騎手の話を聞いていると、いつかまた2400mでの走りも見てみたいものです。ちなみに福永騎手、アンドヴァラナウトに続いてここでも「完璧に乗ることができなかった」と悔やんでいました。GⅠを勝つためにはいかに完璧に近い騎乗が求められるかを痛感させられます。

 

日本ダービー ドウデュースが勝利し、武豊騎手は6度目のダービー制覇

 

 いかがでしたでしょうか。ちなみに検量室取材の時はスタンドでレースを見てからでは間に合わないため、主に検量室脇のモニターでレースやパトロールビデオを見てから行います。中山GJも皐月賞も、ヴィクトリアマイルもダービーも、スタンドで生で見ることは叶いませんでした。それでも、レース直後の生の声を最前線で聴ける貴重な経験をさせてもらっているわけで、これからもそれをきちんとファンの皆さんに届けていきたいと思います。

 

赤塚俊彦(厩舎取材担当)

1984年7月2日生まれ。千葉県出身。2008年入社。美浦編集部。

Twitterやってます→@akachamp5972

 

 今回はなかなかネタが思いつかず、先週末の仕事終わりに急いで執筆。思いつきで書いたためになかなか文章が纏まっていないことをお詫びします。この春の検量室取材ですが、中山GJ、皐月賞、ヴィクトリアマイルの3つは自分でもやり切った感が強かったです。逆にオークス、ダービーは舞い上がってしまい、うまく取材できずに談話を纏められなかったと反省。特にダービーは独特の雰囲気に飲まれました。ちなみにダービー初騎乗となったオニャンコポンの菅原明良騎手。どうしても聞きたかったので最後に「どう?ダービー楽しかった?」と聞いてみたところ、実に彼らしい独特な答えが・・・。これは私の胸にしまっておきます。いつか、またの機会に。