こんにちは、栗東の坂井です。

 先日、2022年度の顕彰馬選定記者投票が行われ、「選定馬なし」との結果が発表されました。GⅠ9勝を挙げて2020年に引退し、今年から顕彰馬選定の対象となっていたアーモンドアイは、記者202名から144の票を得たものの、選定される基準となる得票率75%には届きませんでした。

 私も、顕彰馬選定に関して投票権のある記者のひとりです。自分がそうであるように、ほかの201名の記者それぞれが誠実に投票に向き合ったと思っていますし、だからこそ投票内容は尊重されるべきとも考えますので、その内容について批判する気はありません。ただここ数年、この投票に関わって感じていることは少なからずあるので、今回はその点について触れたいと思います。

 

 ここで私の過去3年の投票結果を挙げましょう。内容は次の通り(50音順)です。

○2020年
キタサンブラック(選出)
キングカメハメハ
ステイゴールド
スペシャルウィーク

○2021年
ヴィクトワールピサ
キングカメハメハ
ステイゴールド
モーリス

○2022年
アーモンドアイ
キングカメハメハ
ステイゴールド
モーリス

 毎年投票しているのはキングカメハメハとステイゴールドで、これはどちらも繁殖成績の優秀さを評価したもの。2021年にスペシャルウィークの名がないのは2020年限りで同馬が選定対象から外れたからで、キタサンブラックの選出もあって2枠空いたところに、現時点でも日本馬唯一のドバイWC勝ち馬であるヴィクトワールピサ、国内外でGⅠ6勝を挙げたモーリスを入れました。

 今年はアーモンドアイが投票対象となったため、これを選ぶことで誰か1頭、票を入れない馬を決めざるを得ません。今回はヴィクトワールピサへの投票を諦めることにしました。

 現状で問題だと考えるのはここです。私は今年、ヴィクトワールピサに投票しませんでした。しかし、ヴィクトワールピサが顕彰馬にふさわしくないと考えているわけではありません。ただ、この意思表示はできません。

 現行のシステムでは、不支持と判断されたものも、持ち票がなくて諦めざるを得なかったものも、ともに「票が入らなかった」という形でのみ表れます。この不明瞭な、不支持の「ようなもの」が、得票率に反映されるのはよろしくありません。顕彰馬となるに適当と考える馬がいるならば、それは頭数を制限せずに挙げられるようにすべきです。何かの順位を決める投票ではないのですから。

 記者ひとり当たりの投票数を制限せず、そのうえで単に得票「数」で選定してはどうでしょう。少なくとも、記者の4票から溢れてしまうがために票を得られない馬はいなくなります。得るべき馬が最大限に票を得て、そのうえで顕彰馬として選定されるに足るかどうかを判断すればよいのです。もちろん、今まで以上に投票者の見識が問われることになるのは言うまでもありません。

 

 昨年末から今年にかけて多くの実績馬が引退しました。抹消後1年以上経過すれば顕彰馬選定の対象となるので、来年はコントレイルらがここに加わります。今年144票を得たアーモンドアイやキングカメハメハももちろん選定対象です。記者ひとりひとりのなかで票が割れるのは避けられそうにありません。

 私の場合、今年投票したステイゴールドが来年は投票対象ではなくなるので1票浮きますが、1票では足りそうにありません。どうすれば責任を全うできるのか、現状の投票ルールの中ではまだまだ頭を悩ませることになりそうです。

栗東編集局 坂井直樹

坂井直樹(調教・編集担当)
昭和56年10月31日生 福岡県出身 O型
血統表を眺めていると、20年以上の時を経て改めてその功績に気づかされることも少なくありません。JRA顕彰馬の対象は中央競馬の競走馬登録を受けていた馬ですから限定されますが、個人的にはエアグルーヴは今からでも顕彰馬にしたいと思う存在です。アドマイヤグルーヴ、ルーラーシップを送り出し、その仔からもGⅠ馬が出ています。自身も牡馬と互角に渡り合い、GⅠを勝ちました。どれだけ時間が経ってからでも、偉大な母を称えられる機会が欲しいところです。