常に人気との兼ね合いの面もあるが、先週のスプリングSは相性が良くないレース。本紙担当になってから今年で5年を経過したが、残念ながら一度も的中していない。レース前の予想としてはスローの先行有利を想定し、当然ながら勝ったビーアストニッシドを警戒していたが、2着になったアライバルの評価を下げてしまった。何故なら前走の京成杯で仕上がりひと息という面もあったのだろうが、スタートから終始、リズムの悪い走りで流れに乗り切れず、中山は不向きと判断してしまったから。スプリングS当日の9Rではルメール騎手が半姉のククナにも騎乗。ククナも中山は初めてだったが、案の定、コーナーで加速できず、ゴール前はよく伸びたが、届かず3着に終わっていた。その時点ではシメシメ、これならアライバルも前走と同じように馬券圏外に終わるだろうと高を括っていた。だが、さすがは名手ルメール騎手。外枠だったのとスタートのタイミングが良かったのもあるが、1コーナーまでに2番手につけたのだった。結果的に最後はハナ差、及ばなかったが、京成杯とはまったく違った走りを見せ、私の予想は完敗に終わった。

 失意の中、最終レースの取材をしていると私と同じような感想を抱いたのか、ルメール騎手にスプリングSの騎乗ぶりを質問する若手騎手がいた。「あまりスタートが速くないので内枠だったら分からなかったけど、外枠だったので前に行くつもりだった」と丁寧に答えていたのはいつもの彼らしい対応だったが、思っていても実際にそれをできるのは技術があるからで容易なことではない。負けた部分は残念でもあの競馬ができれば関係者や応援していたファンの方も納得の結果だろう。レースは水物で常に思い通りにはいかないが、そこにどう対応するかが勝負の分かれ目になる。

 この原稿を書いている3月22日は春分の日も過ぎてそろそろ桜の花見の時季だが、朝からあいにくの雪混じりの雨。幸いにして積雪や道路の通行止めとはならなかったが、いつも予想外のことは起きる。振り返ると今年は年初から想定外のできごとの連続だった。私事ながら人生初の手術と入院。身近な人の新型コロナ感染にロシアのウクライナ侵攻。春の福島出張が決まったと思ったら当日の夜の地震の影響で1週目が中止になって出張も白紙に。幸運にも手術後の経過は順調で今は元気に過ごしているし、コロナ感染の拡大もようやく収まりつつあり、まん延防止措置も解除された。ウクライナの人たちは可哀そうだが、自分としては僅かばかりの義援金を送るしかない。地震に関しては止めようもなく、東北新幹線が脱線しながらけが人が出なかったのは不幸中の幸い。一日も早い復旧を願うしかない。前走の反省を生かしてスムーズに流れに乗ったルメール騎手ほどではないにしても今の状況に対応して精一杯頑張りたい。

美浦編集局 田村明宏

田村明宏(厩舎取材担当)
昭和46年6月28日生 北海道出身 О型
時季的に仕方ないのだが、今週末も雨の予報が出て馬場状態は微妙な状況。波乱含みのレースが多くなりそうだが、注目しているのは日経賞の出走予定のアサマノイタズラ。今回が初騎乗になる横山武騎手が23日の追い切りに騎乗。「口向きの難しさもありますが、いいところも感じました。自分としては必ずしも後方から運ばなくても競馬はできると思います」と頼もしいコメント。かつての相棒、タイトルホルダーが作るペースにうまく乗って行けそうな予感。