9月5日の新潟記念G3をマイネルファンロン(牡6)が勝ちました。ステイゴールド産駒はこの勝利により、16年連続重賞制覇となりました。ここでいう重賞とは正規のパート1グレードと、それ以前のJRAの平地重賞ということで話を進めていきます。週刊競馬ブック9月13日号「日高通信365」によると「JRA連続年度重賞勝利記録上位10頭」は1位19年パーソロンIRE(1969~1987)、2位18年ノーザンテーストCAN(1979~1996)、同ブライアンズタイムUSA(1993~2010)、同フジキセキ(2000~2017)、5位サンデーサイレンスUSA(1994~2010)、同クロフネUSA(2005~2021)、そして7位に16年ステイゴールド(2006~2021)となります。
 現在のベスト10内でステイゴールドのほか記録伸長の可能性があるのはクロフネUSAと現在14年のキングカメハメハ(2008~2021)です。いずれも若年世代の産駒が残っているのが強みです。
 ステイゴールドに話を戻すと、日首港で50戦に及んだ長い現役生活について詳しく触れることはしませんが、天皇賞(春)2着、宝塚記念2着、天皇賞(秋)2着、有馬記念3着、宝塚記念3着、天皇賞(秋)2着と大レースで惜しいレースを続けても、なかなか重賞に勝つことができませんでした。当時は重賞勝ちの記念品の定番がテレフォンカードでした。ステイゴールドのシェアホルダーの一人であった故山野浩一さんは「何とかテレフォンカードを作りたいんだよ」といつも話しており、2000年5月の目黒記念でようやく重賞初制覇を果たした際には、たいそう喜んでステイゴールドの記念テレカを渡してくれたものでした。
 ステイゴールドが大レースで2着、3着を続けたことについては、「いつもがんばって、それでも勝てない健気な人気者」という捉え方と、山野さんのように「いつでも勝てるくせに肝心のところでサボるピカロ」的な見方がありました。擬人化といいますか、馬を人間に寄せて見ることを個人的には好まないので、どちらの説に与するということはありませんが、引退を迎える7歳時にはドバイシーマクラシックG2と香港ヴァーズG1でそれぞれレース史に残るようなパフォーマンスを示したこと、ナカヤマフェスタやオルフェーヴル、ゴールドシップといった産駒の異能を見た上で考えると、山野説がより妥当といえるのかもしれません。
 さて、2002年から種牡馬となったステイゴールドは初年度177頭の種付けをこなす人気種牡馬となりました。産駒がデビューした2005年の2歳種牡馬ランキング(JBISサーチによる)では19位、ファーストシーズンサイアーとしても、1位アグネスタキオン、2位クロフネUSA、3位ボストンハーバーUSAに次ぐ4位にとどまっていましたが、初年度産駒ソリッドプラチナムが3歳を迎えた2006年のマーメイドSで産駒として初の重賞制覇を飾ります。これが16年連続重賞制覇の記録の第一歩となりました。その年の暮れには朝日杯フューチュリティSをドリームジャーニーが制し、その後、ナカヤマフェスタ、オルフェーヴル、ゴールドシップらの出現を見て今日に至ります。特にナカヤマフェスタ、オルフェーヴルの2頭は日本馬として凱旋門賞G1制覇に最も接近したともいえます。
 マイネルファンロンの新潟記念G3までで、ステイゴールド産駒は40頭が99の重賞(海外含む)に勝ちました。JRAで現役の産駒は9月13日現在で28頭います。そのうちグレード勝ち馬はインディチャンプ(牡6)、クレッシェンドラヴ(牡7)、ステイフーリッシュ(牡6)、マイネルファンロン(牡6)の4頭。リステッドまたはグレードレースで3着以内があるのはアフリカンゴールド(セン6)、ソーグリッタリング(牡7)、マウントゴールド(牡8)、レッドローゼス(牡7)の4頭。そのほかエクスパートラン(牡6)、バレリオ(牡6)、フローリン(牡6)がオープンにいます。ステイゴールドは2015年に死んでしまい、2016年生まれの唯一の産駒ハルノナゴリ(牝5)は既に現役を引退して繁殖入りしています。最年少が6歳なので、それらが7歳を迎える来年も重賞勝ちを果たすことができれば連続年度重賞勝利の記録が17年にまで伸びます。
 ステイゴールド自身の成績上のピークが7歳だったこと、障害で活躍するオジュウチョウサンが9歳の昨年に障害重賞2勝を挙げていることなどを考えると、高齢まで高みにステイし、記録を更新することは可能なのではないでしょうか。

栗東編集局 水野隆弘

水野隆弘(調教・編集担当)
昭和40年10月10日生まれ、三重県津市出身
1988年入社。週刊誌の編集、調教採時担当。先日、新型コロナウイルスワクチンの接種をしてきました。ファイザー2回目です。おっさんなので、身の回りでは早く打てた方でありがたいことです。日曜の調教取材が終わって午前中に最寄りの駅前ショッピングセンターに設けられた会場で接種。その後、いつものように仕事をこなし、夜にはいつものように食事とウイスキー180mlを摂取しました。寝ようと思ったのが先か、熱発が先か、就寝前には体温が37.7℃まで上がり、夜中にはたぶん38℃台まで行ったと思います。汗も大量にかきました。翌朝は37℃台まで下がったものの、1日ずっと熱と倦怠感が続きました。接種1度目が何もなかったことで油断していました。本当に副反応はひとそれぞれのようですね。まだの方はお気を付けください。