競馬ブックでは、この秋スプリンターズSの週から当日版、週刊誌、WEBで使う文字の統一規定を改めた。「統一文字」と呼ぶこの決まりは、複数いる記者がすり合わせて、同じ事柄、事象を表現する場合には同じ文字で表記しましょうというもので、出版社では一般的に行われている。明確な答えがないうえに、移ろいゆく言語をどれだけ制限するか、新たな競馬用語(造語?)をどれだけ許容するかなど議題は多く、ひとつひとつを決定する作業は難航。ぽこぽこ出てくる問題をモグラ叩きのようにこなし、まだ地中にモグラがいる状況のもと2019年改定版を何とか作りあげた。

 最も頭を悩ませたのが、カタカナとひらがなの使い分けだった。多くの書き手に浸透するには分かりやすい、判断しやすいが肝要であり、擬声語擬態語はカタカナと新基準を設けたのだが、それでも満場一致には収まらない。広辞林によれば擬声語とは「物の音声や自然の音響をまねた語」とあり、擬態語は「音響には直接関係ない事物の状態などを描写する語」とある。記者ハンドブックや語源辞典を参考にあれやこれや……頭が混乱する日々が続いた。馬関連で言えば、擬声語はパッカパッカ(足音)が有名だが、これは専門紙の日常では使わない。多用するのは擬態語のほう。イライラ、グイグイ、ジワジワ、ジリジリ、ツヤツヤ、ピカピカ、チョロチョロ、ポンと、ガーッと、ビュンと、グングン、モタモタ、フラフラ、フワフワなどが該当する。競馬用語で使うアオる、ズブい、ズルい、マクる、モタれるも従来通りカタカナ表記で。一方、カタカナ→ひらがなに統一を変更したものには、あっさり、すんなり、きっかけ、きっちり、びっしり、じんわり、すっきり、のびのび、のめる、はっきり、ふっくら、まずまず、どっしり、たっぷり、ぎこちないなどがある。全体を見渡せば、今回の改訂によりひらがなが増えた計算。個人的にはすとんと腑に落ち、心地が良くなった。振り分け作業にあたり、周囲から語源を教えていただいたケースも。それによれば、ズバリは「ズバッと」からの派生語で、ギリギリは古くは「限り限り」と書いていたらしいとのこと。チグハグは鎮具(かなづち)破具(釘抜き)と書き、・交互に打っては仕事が一向に捗らない、・棟梁の下につくものが逆に渡していたことからと諸説あることも知った。これからも改定を重ねていく予定。語源を探求し、寄り道しながら気長に取り組んでいくつもりでいる。

栗東編集局 山田理子

山田理子(調教・編集担当)
昭和46年6月22日生 愛知県出身 B型
水、木曜のトレセンではCWをお手伝いしながら障害コース、Bコースを採時。日曜は隔週で坂路小屋へ。調教時間が何より楽しく、予想で最重要視するのは数字よりも生身の馬の比較。人気薄の狙い馬、危ない人気馬を常に探している。09年より関西障害本紙を担当。週刊誌では15年より新たに「注目新馬紹介」のまとめ役を引き継ぎ、新馬の観察に一層力が入っている。