6月下旬、ウィメンジョッキーズワールドカップというあまり聞き慣れない大会で日本の藤田菜七子騎手が優勝した。デビュー4年目の今年に入って中央競馬だけで既に20勝を挙げている活躍は目覚ましいものがあり、一年毎の確実な成長が感じられる。それに続いて8月10日には毎年、日本人騎手が参戦しているシャーガーカップにも女性騎手選抜の一員として選ばれた。新人騎手としてデビューした当初は中央競馬での久々の女性騎手という話題性が先行していた印象もあったが、今や実力で日本だけでなく世界の舞台でも胸を張ってアピールできる存在になっている。

 その藤田騎手が所属するのが根本厩舎。今や珍しい3人の騎手が同時に所属する厩舎で彼女は一番、年下。年長が丸山騎手で二番目が野中騎手。今年は藤田騎手の活躍に触発されるような形でそれぞれ20勝、40勝、17勝と昨年の同時期を上回る活躍を見せ、合計で28勝上回っている。以前にもこのコラムで書かせて貰ったが、3人の騎手はそれぞれがお互いにいい意味で刺激を与え合っている印象がある。今や一般家庭でも珍しい3兄弟にたとえるなら性格的にはちょっと頼りない面もあるが、元騎手だった父譲りの騎乗センスがある長男坊の丸山騎手。しっかりもので一見すると地味な印象もあるが、自ら長期の海外遠征をするなどチャレンジ精神に富んだ次男坊の野中騎手。そして女性らしい愛らしさがありながら一番、負けず嫌いでサッパリした性格の末っ子の藤田騎手。三者三様の個性があってそれがお互いの足りないものを補っているように見える。

 「他人の想像力の限界に制限されてはいけない」
 3月8日の国際女性デーにちなんで今年、グーグルが女性の格言を発表。13ある格言のうちのひとつでアメリカで初の黒人女性宇宙飛行士になった医師のメイ・ジェミソンが言った言葉だ。これが根本厩舎のスタッフジャンパーの背中にプリントされている。勿論これに一番、相応しいのは藤田騎手だが、長期のアイルランド遠征を経験した野中騎手は親切にもその意味を説明してくれたし、厩舎スタッフ皆が意識していることだろう。ともすればお題目になりそうな言葉も、現実に活動している彼らの姿をみれば理屈抜きで納得させられる。毎週のように取材して身近に接している私も刺激を受けている。くたびれかけた昭和生まれの中年オヤジが平成生まれの若者からエネルギーを貰えるのが何より嬉しい。新元号の少しばかり長過ぎた梅雨も関東地方ではもう少しで明ける気配がある。眩しい夏空の元での3人の今後の活躍に注目したい。

美浦編集局 田村明宏

田村明宏(厩舎取材担当)
昭和46年6月28日生 北海道出身 O型
今週は根本厩舎の次男坊、野中騎手が騎乗予定の自厩舎の新潟土曜4Rサバイバルトリックに注目したい。これまでも芝では強敵相手に健闘してきたが、一歩足りないレースが続いている。今回は新潟開幕週に合わせての出走で初めて、芝の短距離に。これがいい刺激になるはず。