いささか旧聞に属するテーマで恐縮ですが、〝トレセン通信〟は6人による輪番制のため、このタイミングになってしまいました。

 何の話かと言えば、MVT(モストバリュアブルトラックマン)のこと。昨年9月にスタートした、この新たな予想ランキングMVTは、先の2回東京・3回京都開催で第1シーズンが終了しました。夏の北海道シリーズ中は函館・札幌に長期出張となる予想スタッフがいるのでオフシーズンとなり、このあとは、9月の中山・阪神開催から第2シーズンが始まる予定です。

 さて、ここで改めて第1シーズンの結果を振り返ってみると、関東では入社3年目、全予想スタッフの中でも石橋慶光と並んで最も若い唐島有輝が、栄えある初代のMVTに輝きました。ちなみに、唐島TMの獲得した39ポイントの内訳を振り返ると……。

 

  的中数=17ポイント、回収率=7ポイント、万馬券=15ポイント。

 上記の通り。もともと、このMVTは的中数に比重を置いたポイント制(開催毎に的中数1位には5点、回収率1位には3点)なので、いかにバランス良くポイントを獲得しているかが分かります。しかも、万馬券のボーナスポイント15点も、トータルで3位タイの成績。的中数でも上位、回収率でも上位、そして、万馬券の的中でも上位、第1シーズンの唐島TMはまさにそんなオールマイティの活躍でMVTに輝きました。

 ここで唐島TMのプロフィールを紹介すると、年齢は1993年生まれの25歳。弊社HPのスタッフ紹介にも記されている通り出身は千葉県ですが、出生地は東京。その後、物心がつく前に北海道へ移り、幼少期は帯広で過ごしたそうですが、その当時の記憶はあまりないとのこと。小学校に上がる前には千葉県の柏市に移り、現在に至っています。

 祖父の代から競馬好きの家で育ったということなので、本人が競馬に興味を持ったのも自然の成り行きでしょう。記憶にある最も古い馬は、幼稚園の頃のステイゴールドだそうです。

 競馬好きが高じたのかどうかは分かりませんが、学習院大学では馬術部へ入部。学生時代の4年間を部活に打ち込んだ後、2017年3月にケイバブックに入社。こうして、馬術部出身のトラックマン(調教班)が誕生したのです。ちなみに、馬術をしていた経験は、仕事では〝あまり役に立っていません〟とのことでした(笑)。

 初めて紙面に登場した頃は、〝自分の色〟を出すことに意識が強くなり過ぎたと、当時を述懐する唐島TM。初代MVTに輝いたのは、それを少しずつ修正していった結果と言えるかもしれません。入社3年目。予想のスタイルに関しては、まだまだこれから試行錯誤があると思いますが、第2シーズンも勿論、上位を狙っていることでしょう。

 ところで関東のランキングではもうひとり、2位の田村明宏にも触れておく必要があるでしょう。日頃は〝馬単〇万円ヒット!!〟といった高配的中で宣伝されることがほとんどない田村TM。この第1シーズンでも34ポイントのうち実に31ポイントまでは的中数部門で稼いだものです。シーズン初めから、とにかく的中数でコツコツとポイントを積み重ねていった田村TM。回収率や万馬券で初めてポイントを獲得したのはシリーズももう終盤、8開催目となる3回中山開催でのことでした。本紙担当者として、とにかく〝数を当てることに徹する〟そんなスタンスを貫いてきたことが、今回の獲得ポイントの分布に明瞭に表れたと言えるでしょう。

 その田村TMは1971年生まれの48歳。出身は北海道札幌市。北海道大学を卒業して1994年にケイバブックに入社し、今年で25年目を迎えるベテランTMです。想定班として国枝厩舎、伊藤圭厩舎、大和田厩舎、田村厩舎などを担当するとともに、今も述べた通り、本紙担当の重責も担っています。

 さて、もともとは関東の林茂徳TMの発案だったこのMVTですが、第1シーズンが始まった昨年の秋競馬開幕週、私はこのトレセン通信で以下のようなことを書いています。

 

「上位にランクされるためには、〝手堅く無難に〟数を当てるだけでは駄目、〝目をつぶってイチ、ニのサン〟で特大ホームランを狙うだけでもやはり駄目。〝バランス感覚の優れた好打者〟にスポットを当てる、(MVTは)そんなルールになっています」

 

 東の初代MVTに輝いた唐島TMはまさにそんな〝好打者〟だったと思います。しかし、これに続いた田村TMは、今も述べた通り、的中数重視のスタンスを貫いての2位確保。今後は、このスタイルの予想者がMVTに輝くことがあるかもしれません。実際に、関西ではベテランの長岡利幸TMが2位に19ポイントもの大差をつけて独走Vを飾りましたが、計9開催のうち、実に過半数の5開催で的中数トップという内容でした。

 いずれにしても、各々の予想のスタイルというものが浮き彫りになるのがこのMVTの興味深いところ。第2シーズンもどうぞお楽しみに。勿論、私も楽しみにしています。

美浦編集部 宇土秀顕

 

宇土秀顕(編集担当)
昭和37年10月16日生、東京都出身、茨城県稲敷市在住、A型。
昭和61年入社。内勤の裏方業務が中心なので、週刊誌や当日版紙面に登場することは少ない。趣味は山歩きとメダカの飼育。
 週刊競馬ブックでは今年も恒例のGⅠプレイバックを企画しています。このコラムがアップされる7月3日、拙宅にて吉岡TMと田村TMのコンビが対談し、上半期の古馬GⅠ戦線を振り返ることになっています。いつも〝観戦記〟で鋭い結果分析をする吉岡TMと、フィエールマンの手塚厩舎、そして、アーモンドアイの国枝厩舎の担当でもある田村TMから、どんな話が聞けるでしょうか……。