5月14日に行われるJG2京都ハイジャンプに役者が揃った。個人的には震災の影響で取り止められた中山グランドJをいつどこで代替するのかを明言せず、うやむやのままにG2を開催するJRAの対応はいかがなものかと思うが(と書いたところ5月13日14時23分、7月2日(土)に中山で施行するとの発表あり)、何しろメンバーはいい。週半ばの雨も週末までには回復するようなので、障害ファンもそうでない人も、五月晴れのなかを軽やかにかつエネルギッシュに舞う14頭の熟達した技を堪能できるのではないかと思う。

 小誌週刊競馬ブックでは「王者再びキングジョイの舞」として1週前にこのレースを紹介したが、社の意見として活字にしづらかった個人的な見解も取り入れ、それぞれの馬にどんな魅力があり、どんな心配点を抱えているのか、追記してみたい。

 キングジョイ……08年、09年に中山大障害を連覇し、JRA賞最優秀障害馬を2年連続で受賞。いわずと知れたナンバーワン、障害界の「キング」だ。7歳暮れ以降、頚椎骨折や寝違いなどで復帰が延び、前走(3月21日阪神スプリングJ)が1年3カ月のブランク明け。トレセンで初めて姿を確認した2月4日にまず「グランドJに間に合うだろうか?」と不安になったほど病み上がりといった雰囲気で、稽古を積んでも劇的に上向く様子もなかったので、始動戦の阪神スプリングJはあまり迷わず無印に。正直、私の目にはよくて七分程度の状態に映った。それがそれが、実戦に行くとさすがの振る舞い。飛越がうまいとか何とかは当たり前で、感服したのはその気力。9歳馬の長期休み明けのうえ他より重い62Kだったので3~4コーナーで後退しかけた時はあ~やはりなどと見ていたのだが、そこからまた盛り返して馬群に取りつき、最終障害を飛んでから更にギアチェンジして再び加速。王者たるもの、いかなるキツいシチュエーションでも簡単には白旗を上げないのだと、貫禄とプライドを感じずにはいられなかった。使ってからというと日に日に活気を取り戻し、体つきも顔つきも第一線を走っていた頃の感じに。間違いなく調子を上げている。年齢を気にするファンの方は多いと思うが、現在、8歳以上の障害オープン馬は東西合わせて25頭。小誌で連載していた「心技体」でお馴染みの青木修先生によれば「オリンピッククラスに馬術の馬が出ようと思ったら、7、8歳では無理。そのくらい時間をかけて人間が作っていく」とのことだし、思い出してください、オーストラリアの名ジャンパー、カラジを。07年に中山グランドJ3連覇を遂げたのが12歳。9歳なら、まだまだ若いもんには負けておれん、という感じでしょう。ちなみに取材担当者によれば1週前に行った京都の三段跳びの練習では「やる必要がないぐらい上手に飛んでいた」とのことです。

 ランヘランバ……7歳7月から6戦5勝。もともと飛越は巧みだったが、折り合いを覚え、自在なレースができるようになってから無敵モードに突入した。いわばキングジョイが休んでいる間に出てきたスターホースだ。昨年暮れのイルミネーションJで2着マイネルネオス(次走大障害で3着)につけた着差が8身差。今年2月の春麗ジャンプSでマイネルネオス、バシケーン(こちらは昨年の中山大障害勝ち)を6馬身ち切ったことから推し測れば、この馬のポテンシャルの高さが窺い知れる。最大のセールスポイントは軽快なスピードがあり、なおかつ鞍上の意のままに、思い通りにレースの駆け引きができるところ。スピードがあるタイプなので初めての3930mがプラスに作用するかというとそうは思わないが、大きなマイナスにもならないだろう。軌道に乗ってからの唯一の敗戦が牛若丸JSでの2着。この時は雪の影響で2日間乗れない時があり、その影響か、当日は18K増と少し重かった影響もあったよう。この中間はトモの繋ぎに張りが見られて放牧に出され、3カ月半の休養明けで臨む今回、馬体重はポイントとなりそう。師によれば、「460Kぐらいで出たい。472Kで動けなかったから、470Kは切りたい」とのこと。

 テイエムトッパズレ……前走までは、ホームは京都コース、ハナを切ってこそというイメージに尽きた。気性が難しくて揉まれると良くないが、ハナか、バラける展開、気分良く自分のリズムさえ守れれば少々キツいペースでも長い距離でも最後まで頑張りが利くという感じ。ただ、8歳春にして進境が見られた。出遅れて万事休すと思われた阪神スプリングJが、タスキからジワッと先手を窺う、それまでにないレース運び。経験に裏打ちされたベテランの味とも言うべきだろうか。阪神コースで、いつもと違う競馬で結果を出したのだから、障害馬として幅が出たというものだ。トレセンでビシビシと追う調整が合うようで、前走時同様に放牧には出されず栗東で調整。体つきはコロンとしている時より、スッキリ映る時の方が結果が良く、今は間違いなく後者の方。

 スズカスペンサー……障害馬としては小ぶりだが、放牧明けとなるこの中間は馬体を大きく見せて、フレッシュな状態。斤量泣きするので、狙いははっきり60K以下の時。また、スピード自慢が揃う速いペースでは追走に苦しむ傾向があり、距離もたっぷりあった方がいい。4戦目の東京戦で外(右)に斜飛して障害調教注意を受けていて(1番人気に支持されながら6秒7の大差負け)、前走でも3角から右にモタれてラチから離れないところが。左回りより右回りでこそだから、関西圏でいえばタスキのある阪神より京都だろう。現に09年のこのレースでトッパズレの2着にきている。京都3930m、60Kなら最高の条件。

 タマモグレアー……昨年8月に2戦目で勝利を挙げるとあれよあれよと3連勝。暮れの中山大障害では首の上げ下げで僅かハナ差競り負けてビッグタイトルを逃したが、3着には4馬身の決定的な差をつけ、トップレベルの力を証明した。大本命視された阪神スプリングJが震災のため1週スライドし、狙い済ましていた本番の中山グランドJもなくなってしまい、この春勢いに乗り損ねた感はあるが、調整はいたって順調のよう。伸びあぐねた前走の内容が少々物足りないが、追い切りの動きはいい。

 プライドイズハート……相手が格段に強化するが、長い距離で渋太さを発揮するタイプ。4月6日から27日まで攻め時計を出していない点が気になったが、美浦で調教を見ている山下TMが「稽古を見る限り状態は良好。重賞初制覇のチャンス」とプッシュするぐらいだから、ムードはいいのだろう。

 デアモントはトップレベルと初顔合わせだが、前に行け、相手なりに動けて粘り強いから消しづらいところ。抽選対象組で一番怖いのは伸び盛りの4歳馬マサノブルース(6分の5の確率で出走可能)。追われて味があり、直線の置き障害のないコースで不気味だ。

 原稿を起こしながら頭の中を整理した。去年は△─無印で外して馬単54070円と悔しい思いをしたので、何としても的中したい。ではでは、結論は当日版で。

栗東編集局 山田理子