ファン心理:応援行動(山田理子)

 今年もあの「総選挙」が話題になった。毎週末に必ず「投票」している身としては、JRAの勝ち馬投票もひと工夫で盛り上がらないかと考えてみた。

 たとえばインターネット投票を通して、ジョッキー個別の応援のサイトを展開するのはどうだろう。IPAT会員が応援サイトに登録し、贔屓のジョッキーを選択。そこはファンクラブのようなもので仲間が集い、騎乗ぶりやレースの感動、馬券の悲喜こもごもを語り合う。会員個人の了承を得たうえで、ジョッキーに投じた馬券の総票数(つまり馬券購入総額、年間が分かりやすい)のランキングなどを発表してみるのも面白い。「私、○○騎手が好きで応援して馬券買ってるけど、投票数は全国で○番目だわ」なんていう感じ。時々、ジョッキー本人からのコメントがあったりすれば、ファンはそりゃもうたまらない。ぜひともJRA所属のすべてのジョッキーを対象として欲しい。日本人には判官贔屓の心情があり、成績下位であったり休業中であってもファンは熱い声援を送り続けると思うからだ。IPAT会員なら素性が知れているので、健全に運営できるのではないだろうか。

 ところで今年の日本ダービーの入場人員は前年比121.1%の13万9806人だった。競馬はギャンブルだが、ギャンブルの側面だけではこれだけの人は動かない。20代の女性が興奮し涙してキズナと武豊騎手の勇姿を語ったとき、新しい風が吹いた気がして、同時にああ、これが入口だと思った。キズナと武豊騎手のファンになって応援する。それで競馬が好きになって嵌まっていくのだ。次週の安田記念が前年比105.9%とあり、リピーターがいた可能性はある。カテゴリー外だったマイル路線をも制圧したロードカナロアは紛れもなく世界のスーパースターであり、圧巻の走りを見て虜になった人もいるかもしれない。儲けたいとか勝ちたいだとか、馬券術なんてのは、競馬のキャリアにおいてその後のこと。パドックに所せましと並ぶ色とりどりの横断幕を見ても分かるように、みんな馬を人を「応援」したいのだ。その心理を焚き付け盛り上げているのが先の「総選挙」。競馬もそこのところをうまくサポートできればファンの層が厚くなるだろう。

 9日の日曜に2週後に控えた宝塚記念の登録が出た。少数精鋭で、オルフェーヴル、ジェンティルドンナ、フェノーメノ、ゴールドシップが顔合わせ。未対戦のカードもあり、フルゲート18頭割れでも頂上決戦にふさわしく胸躍る。ただ、ファン投票(登録馬のうちファン投票上位10頭に優先出走権)は意味をもたなかった。仮に“上位10頭までに入った馬は必ず出走させてくださいよ”とJRAからお達しがあるなら、今年の場合、(5)エイシンフラッシュ、(6)キズナ、(7)ヴィルシーナ、(9)ロゴタイプ、(10)ショウナンマイティが加わり、ロードカナロア(27位)の票も伸びたはずで超豪華メンバーになるわけだが、生き物相手にそれはあり得ない。国内GⅠの数が増え、海外遠征も当たり前になって選択肢が格段に増えた今、宝塚記念に有力馬が一極集中することは考えづらく出走馬を確定する意味でのファン投票はすでに役割を終えているように思う。投票行為は応援の心理を形にしたものなので企画としてはあった方がいいが、現実に沿った方法で何かいいアイディアはないものだろうか。

栗東編集局 山田理子