独善的、海外競馬の楽しみかた(吉田幹太)

 今年の春に競馬法が改正になって、特定の海外競馬の馬券を日本でも売れるようになった。

 早ければ来年から売るらしいが、日本の競馬の仕組みに慣れている自分にとっては少し違和感を感じなくもない。主催者が違うのに、馬券を売れると言うのがなんだか妙な感じがしてしまうのだ。

 海外では、当たり前のように行われているのだから、逆があってもおかしくない。それに、せっかくのスターホースが日本の大事なシーズン中に遠征するのだから、正当さもあるように思う。

 そもそも、お客さんの要望もあったのだろうから、悪いことではないのだろう。これで海外競馬にもっと目が向くようになるのはいいことだと思う。

 かくいう自分は海外通と言うほどの知識はなく、常に海外のレースをチェックしているわけでもない。

 それでも、たまに行く海外旅行は間違いなく競馬が行われている国を選んで、十中八九その国の競馬場に足を運ぶことになる。海外競馬に限って言えば、レースの中身やグレードよりは、競馬場そのものの方に魅力を感じてしまう。

 また、これは自分の場合だけれども、競馬を通してしかその国をちゃんと理解することができないような気がしているせいかもしれない。それに実際、競馬場に行くのは、観光名所に行くことより大変だ。

 まずは競馬場があるかどうかを確認して、競馬場がある場合はどこにあるかを調べる。
 更には自分が行けるタイミングで開催がやっているかどうかも調べなければならない。

 この、開催しているかどうかを調べるのは、スマートフォンが普及した今でもかなり大変なことになる。日本語のサイトはほとんどなく、現地の言葉で書かれたサイトで調べるしかないからだ。

 英会話などまったくできない自分でも、その国の言葉を少しでも理解する努力をして、グーグルマップのなかった頃はいろんな地図をネットで調べ、航空写真なども必死に探して参考にしたりした。

 この一連の作業こそが、その国のことを見るのに結構、役に立つのではないか。

 少なくても、その国で競馬がどのような位置にあって、どういう扱いをされているのかは、かなり理解できるような気がする。

 日本との違いをいろいろ発見できて、それだけでも調べた甲斐があり、実に興味深かったりする。

 現地に行けば、もっと大変で、楽しいこともあるのだけれど、それはまた後日にしましょう。

 5年前の夏、フランスのドーヴィル競馬場に行ったのが最後で、すっかり海外遠征のプランもなくなり、あれこれ調べる作業も滞ってしまった。

 夏は比較的自由に動けるだけに、いつもこの季節になると海外に行きたくなる。しかし、何よりも先立つものがなく、もっぱら知らない国の知らない都市をグーグルマップで眺めて、競馬場らしきものを探し出しては、ネットであれやこれや調べて満足しているだけ。

 何とか資金を手に入れて、自分なりの国際交流をしたいのだけど…。

 来年、日本で売るかもしれない海外GIで、敢えて日本馬以外の馬に狙いを絞ってみるか…。意外な高配当が期待でき、うまくいけば地中海あたりの競馬場にも行けるかもしれない。

 つまり、海外の馬券を売ることはそのチャンスが増えるということか。やっぱり、いいことなんだな。

美浦編集局 吉田幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマン経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派。