当てたい、でも当たらない、片想いの函館2歳ステークス(丹羽崇彰)

 2017年に初めて函館に滞在出張で来てから、本紙担当は2歳戦が主。2歳戦は過去の情報がないので、普段から馬を見ている調教班の私が担当することになっています。

その函館6週間の間に行われる2歳戦の総決算が、最終週に組まれている函館2歳Sであります。

 

2歳S組からクラシックに進む馬はほとんどなく、それどころか重賞への出走がこれで最後、という馬も少なくありません。お世辞にもレベルの高い一戦とはいかないのが現状です。

 

ただ、馬を見るため毎週火曜日(本来は休み。だけど水曜は追い切りが多すぎて、ゆっくり見る時間がない)から調教に出て、2歳S2週前に週刊誌のフォトパドックに掲載する馬を選定し、1週前にはたくさんの原稿を書いているので、どうしてもこのレースへの思い入れは強くなり、何としても的中したいと願っているわけです。

さて、今年も2歳Sが終わりました。
結果的に本紙予想は外れ……。
毎年人事を尽くして天命を待っていますが、なかなかうまくいきません。

 

週刊誌の観戦記で2歳Sについて触れましたが、行数が少なすぎました。
私が何を考えて印を打ったかなどなど、1頭ずつ振り返ってみたいと思います。

 

(1)ロッソランパンテ 無印
東京で新馬勝ち。モタれたりして若さ全開でも勝ち切れた。ただ、北海道以外で勝ち上がった馬は2歳Sで不利。函館入厩後の雰囲気もぱっとせず、無印に。やっぱりまだまだ幼くて、レースに集中できなかった。

 

(2)オマツリオトコ 無印
馬体はいいなと思ってたけど、初戦の荒々しいレースっぷりから良化はまだ先だと思ってた。厩舎的にも、ダート馬だろうと高を括っていた。結果的にすごい脚で3着に追い込んできたけど、重馬場だったからだと思う。先々はやはりダートだろうか。

 

(3)クリダーム △
厩舎的にもジョッキー的にも人気だろうけど、飛ぶ(馬券圏外になる)だろうと思ってた。口向きが悪く、中間も直る様子がなかったので、控えるような形になるとアカンだろうと。
結果はハナを切って2着に残っちゃった……。でもまぁ直線は内にモタれていたし、今後も大きな印を打つのは躊躇するだろう。言い訳じゃないもんね。

 

(4)オボロヅキヨ 無印
未勝利馬の好走は昨年のグランデ(新馬戦5着→3着)の記憶があって一応注意したが、心身ともに幼過ぎてノーマーク。

 

(5)スプレモフレイバー 
20年モンファボリ、21年ポメランチェ……新馬戦で逃げて楽勝した馬は本番で何もできていないのは分かっていたけど……
だから何か嫌な気がしたけど、新馬戦が12.5―11.1―11.8―11.8―11.3―11.4と道中で息を入れて、その分直線もしっかり伸びているラップだったので、大崩れはしないだろうと思って本命に。

結果はまったく伸びずの8着。「何か嫌な予感がする」これだけで大きく割り引くのはいかがなものか思ったけど、やっぱり直感はある程度正しいと思う。私のラップや馬場状態の分析も未熟でした。

逃げの本命だったと今でも反省。
この子と結婚することはないだろうな、と思いながら付き合っていたAちゃんを思い出しました。
馬体やフットワークはいい馬なので、次走以降に期待したい。

 

(6)ニシノシークレット 
ダート1000mで勝ったけど、フットワークに柔軟性がないわけではない。調教の動きも良かったので、一応打っておこうと思って△。
見せ場はあったけど、トモが甘いのでひと踏ん張り利かなかった。体力がついていけば、そこそこ活躍できそう。

 

(7)シンゼンイズモ 無印
初戦で見せた内にモタれる面は2戦目で解消したが、おっとりした気性で馬体もまだもったり。重賞では忙しいとも思っていたが、時計がかかったことで本番ではちょっと伸びていた。

 

(8)ミスヨコハマ 無印
初戦はスプレモフレイバーの2着で、2戦目ではレースぶりがスムーズになって順当勝ち。ただ、この時が6頭立てでメンバーレベルに疑問が残ったので無印に。本番では3~4角で微妙にロスがあったので、5着でも悪い内容ではなかった。

 

(9)ゴキゲンサン 
新馬勝ちしたけど、レベルは正直高くなかったと思う。だから最初は印を打つのをやめようと思ったけど、馬体が絞れて調教の動きもアップしていたので、△を打った。実際はさほど絞れていなかったが、体つきが良くなればもっと走れるようになるはず。

 

(10)ミシェラドラータ 
新馬戦敗戦→未勝利勝ち、清水久厩舎、父キンシャサノキセキと、私が初めて出張に来た2017年の勝ち馬カシアスに条件がそっくり。調教でしっかり負荷をかける厩舎らしく、中間も意欲的に乗り込まれ、また走りっぷりも良かったので十分勝負になると思って対抗。

返し馬もいい雰囲気に思えたが、どうやらイレ込みがあったよう。レースでは勝負どころでまともに詰まってしまい、可哀そうな内容に。諸々スムーズだったらどうだっただろう……。

 

(11)ニーナブランド 無印
具合はとっても良さそうだったので印を打とうと考えたが、初戦は開幕日の絶好馬場+最内枠に恵まれた感。最終週+道悪では条件が違い過ぎるだろ、と冷静になってノーマークに。
調教班だから調教の動きを見て印をつけることは大切だけど、一旦立ち止まって考えるのも必要ですね。

 

(12)ブトンドール @(二重△)
デビュー前は全然目立たなかった。少なくとも私の目には地味に映った。馬体のバランスがひと息で、新馬戦当週の追い切りでは手前を替えずに切れのない走り……。太め残りにも見えたが、それで勝たれてしまったから驚いた。

2歳Sでも当初は深く考えていなかったが、予想が進むにつれてこの馬アリだな、と思うようになった。
一番の要素は天候が悪化しそうだったこと。身のこなしが硬めだが、道悪馬場に行けば却ってそれがプラスに働くこともある。
そして調教の動きもガラッと変わっていて、当日のマイナス8Kの表示を見て馬券を買い足した。でもスプレモフレイバー、ミシェラドラータと絡めていたので一銭にもならず。

もう少し印を上げておけば良かった。

池添学厩舎は北海道シリーズでの回収率が結構高めですね。

 

(13)アスクドリームモア ▲
週刊誌の新馬紹介のコーナーに取り上げていた馬で、新馬戦を完勝して連闘での出走。
あまり数を使わない藤原英厩舎の連闘策だから、状態面がよほどいいのだろうなと推察。現に、金曜日に軽く時計を出した時の気配がとても良かった。
ただ、やっぱり連闘での道悪競馬は、初戦と勝手が違ったよう。スタートから外にヨレて競馬にならなかった。
トビが大きいので、良馬場ならもっとやれるはず。

 

 

こんなところでしょうか。
本命の選択ミスと、ブトンドールの評価をもっと上げられなかったことが残念です。

今年で函館2歳Sを担当してから6年が経ちましたが、〇▲での的中があるだけで、まだクリーンヒットがありません。
気持ちが入り過ぎている気がしないでもないですが、年々ノウハウを蓄積しているので、来年こそは的中できると思います。

 

たぶん。

 

栗東編集局 丹羽崇彰

丹羽崇彰(調教担当)
1989年2月1日生まれ。2013年、キズナがダービーを勝った年にケイバブックに入社。普段は栗東坂路の調教や編集作業を担当。週刊誌の新馬紹介のコーナーを担当しているので、新馬の観察に特に熱を入れている。

今年は初めて函館→札幌と北海道シリーズ13週フル参戦。折り返しを過ぎて滞在も残すところちょうど1カ月。少し疲れてきたけど、娘の写真を毎日1時間眺めて、自分を奮い立たせています。

 

Twitterを@niwa_bookのアカウントでやってますので、よければご覧ください。