こんにちは。栗東の坂井です。
先週の朝日杯FSで武豊騎手が22回目の騎乗で初めて同レースを制しました。私は中京競馬場にいたので現地でその場面に立ち会うことはできませんでしたが、その瞬間のことを西村TMがtwitterでこうツイートしていました。
武豊騎手が今まで勝ってなかった朝日杯を制し、阪神競馬場は大きな拍手が湧き起こっている。
— 西村敬(競馬ブック) (@nishiyan0922) December 19, 2021
レースで盛り上がる場面というのはこれまでにもたくさんありましたが、コロナ以降、競馬場での盛り上がりには以前のそれとは違うものを感じることが多くあります。大きな声を出せないなか、拍手で思いを表現する場面は増えました。先週のこの瞬間もそのひとつでしょう。
振り返って、私が最も印象に残っているのは5月15日、中京競馬場で行われた京都ハイジャンプです。1番人気は年明けの中山新春ジャンプSを勝ってオープン2連勝と勢いに乗るスマートアペックス、2番人気は鉄人熊沢騎手の駆るトラスト。それに挑んだ3番人気がマーニ。鞍上はこのレースを最後に引退する三津谷隼人騎手でした。
道中は3番手を進んだマーニ。残り1000m、ハナを切っていたボナパルトと内ラチの間のスペースに吸い込まれるように潜り込み、ひと脚早くスパートをかけて先頭へ。コーナーでリードを広げて単独先頭で直線を向くと、もうその時点で場内は大きな拍手。中京の障害戦は直線にふたつの置き障害がありますが、そのひとつ目を飛んだ時点で脚勢的にマーニの勝利は濃厚。あとは最後のひとつを無事にクリアしさえすれば、自らの最終騎乗を重賞初制覇で飾ることができます。このときは記者席もほとんどが三津谷隼人応援団状態。最後のひとつを何とか無事にという空気が充満していました。ある記者は応援に力が入り過ぎ、ラスト1ハロンのラップタイムを取り忘れてしまったほどでした(他の記者がちゃんとフォローしていたので事なきを得ましたが)。
「最終障害を今越えた!先頭7番マーニ、三津谷隼人!もう拍手が止みません!」
スピードの緩まない飛越で最終障害をクリアし、後続を寄せつけないままマーニはゴール。三津谷騎手が右のこぶしを力強く振り下ろします。最後の直線412.5mいっぱい拍手が響き続け、それもゴールに近づくほど大きくなって地鳴りのように聞こえたほど。実況氏の興奮も当然でした。
三津谷騎手はゴールして何度もマーニを愛撫し、感慨深げに天を仰ぎます。2角で馬が止まると、一緒に出走した人馬が次々にマーニと三津谷騎手のもとへ祝福に近寄ります。客席からも多くの祝福の声がかかったのでしょう、地下馬道へと下るスロープで三津谷騎手は何度も客席に頭を下げていました。今年はその後も、ゴール前で大きな拍手が湧くレースはありましたが、このインパクトに勝るレースには今のところ出会っていません。文句なしの2021ベストレースです。私もこの日は興奮冷めやらず、宿泊先に戻るとレースリプレイを見ながら缶ビールを開けました。
しかし、歓声じゃなくて拍手が4角からやまない競馬なんて記憶にないですね。これは忘れられないレースになったなあ。
— 坂井直樹 (@n_tomahawk) May 15, 2021
2022年はどんな1年になるのでしょう。2021年はGⅠでも、フェブラリーS、天皇賞(春)、NHKマイルCは無観客での開催でした。2022年こそは、すべてのレースが多くのお客さんの前で行われ、出走人馬がたくさんの喝采を浴びられる年となるよう、心から祈っています。
栗東編集局 坂井直樹
坂井直樹(調教・編集担当)
昭和56年10月31日生 福岡県出身 O型
まだ今年のJRAの競馬開催は有馬記念、中山大障害、ホープフルSとみっつのGⅠを含めた3日を残しています。最後まで存分に楽しみましょう。そしてすべてが終わったら、ゆっくり1年を振り返り、みなさんの2021年のベストレースを思い出してみてください。2021年の「週刊トレセン通信」は今日の更新が最後となります。年明けは1月12日、美浦の吉田幹太TMから再びスタートする予定です。今年も1年お付き合いいただきありがとうございました。