夏競馬が終わって(吉田幹太)

 先週末で夏競馬が終わった。それに合わせるかのように気温もグンと下がって、今朝8日の美浦トレセンの温度計は15℃の表示。調教に騎乗する人達の格好も先週までとは打って変わって長袖、秋の装いになった。

 約3ヶ月に渡って続いた夏のローカル開催、心配されたコロナ感染者は最小限と言っていい数字に収まったような気がする。無事、予定通りに日程をこなせたのは、対策がうまく機能したと評価してもいいのだろう。

 福島開催こそ、スタンドの補修のために無観客になったが、昨年とは違って限られた人数でもお客さんを最後まで入れて開催できたことは本当に良かった。

 地方開催の場合、無観客になってしまうと場所を移して競馬をする意義が失われてしまうような気がする。こと馬券に限って言えば無観客でも売り上げは変わらないかもしれない。しかし、普段は見れない地方の競馬ファンの方々に目の前で競馬を見てもらうことができる。それこそが一番、意味のあることで、ここまで全国で競馬が楽しんでもらえるようになった大きな要因のなのではないか。

 その点で言うとオリンピックの無観客は非常に残念だったのではないか。

 コロナがある程度めどが立ってから、日程をずらして行う手はなかったのだろうか。無観客で行われるのであれば東京である必要がどこにあるのかさっぱり分からなくなる。

 そもそもマラソンと競歩が札幌で行われたように、真夏の猛暑の中で行う意味ももうひとつピンとこない。結局のところは関係団体との折り合い、そして関係企業との関連が最も大事なイベントになっているだろう。

 そんな邪推とコロナ感染者の爆発的な増加が気になったせいか、例年の大会のような心に響く場面は自分に関しては少なかったような気がする。終わったあとでもずっと見ていたいような感情、これももうひとつ湧いてこなかった。

 選手の動きと結果だけではなく、それを見ている観客と歓声。スタンドの熱気。そんな情景があってこそのオリンピックだということを改めて気がつかされた。

 その意味で言うと今まで見てなくて、過去の大会との比較ができなかった馬術競技は非常に印象に残った。

 何よりも今回ほど長々と中継することもなかったのではないか。録画だったにしても、競馬が終わった直後に始まった総合馬術のクロスカントリーなどは延々と見てしまった。

 競技自体も面白かったが、知らないことだらけの自分としては解説も非常に面白かった。馬具や技術が競馬にも影響を与えていることが分かって興味深くもあったか。もっと早く見るべきだったのかもしれない。とは言っても、なかなか今回ほど長々と中継してくれる機会もなかったのだろうけれど……

 コロナ禍がある程度収まったが、足を運んで見てみたい。そして、いずれは海外の大きな大会も見てみたい。その前に、日本でももっと映像が見れる機会が増えればもっといい。裾野も広がるのではないか。

 あらためて、この夏に各地方でお客さんを入れて開催できたことは、先々の競馬にとって大きな意義があったのではないかと思っている。

 家族連れのお客さんも少しは見かけることがあった。今は小さな子が、いい思い出と印象を競馬場に持てば、きっと戻ってきてくれるはず。

 一方、自分自身はもうひとつ馬券の成績は振るわず、時短営業の影響で地元のエネルギーももうひとつ吸収しきれなかった。

 今週から始まる中山開催。気持ちを切り替えるのには最高の気候になってきた。

 何とか、いい予想と判断ができるように頑張ります。

美浦編集局 吉田 幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。