血統閑談 #001 ドクタースパートの逆襲(水野隆弘)

 こんにちは。7年ぶりくらいにこの欄に戻ってきました。7年前は「リレーコラム」といっていたように思いますが、交替で書いているだけでテーマをあとに渡しているわけではないのに「リレー」とはいかがなものかというもっともな意見があり、タイトルが今のものに変わりました。
 それはともかく、諸般の事情によりこの7月からはメンバーを改編して東西4名ずつの8人体制で進めます。このあと、8月に入りますと比較的フレッシュな顔ぶれが並ぶことになる予定です。
 今月のトピックでは、何といってもセレクトセールが最大のもので、特に今年はポスト・ディープインパクトの考察というのが大変重要になってきますが、そんな先のことは分かりません。
 そう思っていたところ、7月14日のジャパンダートダービー(大井競馬場、ダート2000m)をブービー人気のキャッスルトップ(牡3歳、船橋・渋谷厩舎)が勝ちました。父はバンブーエールです。
 アフリート直仔のバンブーエールは2003年生まれ。今や懐かしい黒、白三本輪、白袖のバンブー牧場の勝負服で2008年のJBCスプリントや2009年の東京盃など10勝を挙げました。古馬になってからのスプリンターとしての活躍が強く印象に残りますが、3歳時にはジャパンダートダービーとダービーグランプリでの2着の実績もあります。2012年から種牡馬となり、これまでリステッドの大沼Sに勝ったダンツゴウユウなどを送り出してきました。しかし、産駒の重賞勝ちはこれが初めてです。この3歳世代は種付け頭数8頭、血統登録頭数4頭ですからわずかなチャンスを生かしたことになりますが、そのあとすぐに種付け頭数は増加に転じ、昨年は38頭に上りました。馬産地のアンテナというか予見力には恐れ入ります。
 馬主兼生産者は新ひだかの城市公さん。この方については7月19日発売の「週刊競馬ブック」掲載「競馬Navi Talk」で原山実子さんが詳しく書いておられますので、是非ご一読ください(バックナンバーは「週刊競馬ブックDigital」でもお求めいただけます)。
 キャッスルトップの母ジーガートップランはマヤノトップガン産駒で中央1勝。祖母ジーガーターセルはホスピタリテイ産駒で中央3勝の実績を残しています。3代母ジーガーギャラントはタケシバオー産駒で中央14戦未勝利でした。牝系は8代遡った第参ロールユアオーンの孫メイジミドリが1957年の阪神3歳S、1958年の京都記念(秋)に勝っていて、これが一族直近の重賞勝ち馬ということになり、何とも地味な牝系というほかありません。
 3代母から母までは3代にわたって新冠の須崎牧場で生産されました。祖母ジーガーターセルは前述のようにホスピタリテイ×タケシバオーの配合。須崎牧場のこの配合といえば、そう、皐月賞馬ドクタースパートと同じです。
 ドクタースパートは道営で4連勝して中央入り、1988年の京成杯に勝ち、翌1989年に皐月賞に勝ちました。ジーガーターセルは1990年生まれなので、ドクタースパートの再現を狙ったものと推測されます。
 その望みはすぐには叶いませんでした。しかし、およそ30年経って、孫の世代で、別のオーナーブリーダーのもとで大きな果実をつけました。
 億のお金が飛び交う世界と並行して、このように長い時間をかけて紡がれる物語があるのも競馬なのですね。

栗東編集局 水野隆弘

水野隆弘(調教・編集担当)
昭和40年10月10日生まれ、三重県津市出身
1988年入社。週刊誌の編集、調教採時担当。「リレーコラム」のころは毎回テーマを考えるのが大変でした。そこで、血統に絞れば担当の2カ月に1回は何かしらネタがあると思いつきました。我ながらいい作戦だと思います。