春競馬もひと段落(吉田幹太)

 先週の安田記念で6週続いたGIレースもひと段落。今年に入ってからのGIは関西馬5勝に対して関東馬が6勝と美浦組が勝ち越している。

 数字以上に印象的だったのは、グランアレグリアやエフフォーリアのようにその部門の中心的な存在に関東馬がいたことか。勝利数ではまだ差はあるけれども、質の部分では互角といってもいいレベルにはなってきたのかもしれない。

 本来なら、その有力馬達を目の前で見ているのだから、もっと結果を出さなければならないのだけれど、それがうまくいかなかった。

 特にここ2週の安田記念とダービーは全くの見当違い。ダノンキングリーは早い段階での追い切りの印象を引っ張りすぎて、ここ2走の内容からもかつての感じはないのではないかと考えてしまった。東京巧者でレースぶりからもマイルはベストに近いはずだった。得意の休み明けなら、十分に買える要素はあったのに……

 ダービーでの失敗が尾を引いたのかもしれない。今年は1、2番人気に推されるであろう2頭の追い切りを目の前で見れるまたとないチャンスだった。チャンスがゆえに肩の力が入りすぎた。

 エフフォーリアもサトノレイナスも文句なし、というほどではないかもしれないと思った瞬間、動きだけは素晴らしかったタイトルホルダーに気持ちが入ってしまった。

 もっと違う視点で判断できなかったか、レース後に出てくるのは反省ばかり。しかし、これが間違いの始まり。完璧に判断などできるはずはなく、それほど大きく間違ったわけでもなかった。それなのに安田記念はより厳しく、是か否かを判断しようとしてしまった。

 つくづく、勝負事は流れが大事だ。より良くしようと反省することが必ずしもプラスになるとは限らない。むしろ、失敗をあっさり消化することの方が大事なのではないかと思う。こういう精神状態のときは、尾を引かずに自然といい判断ができていたりする。

 この春はそういう状態に自分を持っていけなかった。単に予想や馬券の調子がいいか悪いかだけではなく、普通の生活の中での出来事も少なからず影響することが多い。

 独り者の自分にはこの部分でかなり有利なところがあるはずなのに、もうひとつ気持ちに安定感がなく、考えこむようなことが多かった。

 やはり例年とは違って、ダービーの有力馬達の動向を目の前で見れたことが微妙にバランスを崩す要因になったか。2歳戦から常にダービーのことを頭に置きつつ見ているだけに、今年に限っては必ずどのような形でも結果が出ると思い込んでいたのかもしれない。

 と言いながらまたまた反省してしまっている。

 先週から2歳戦が始まって、東京では大物感溢れるコマンドラインを含めて3鞍とも関東馬が勝ち上がった。美浦での追い切りも3分の1近くは2歳。すっきりした頭と目でしっかり追い切りを見なければ。

 これからが時計班の自分たちとしては最も面白くて、力が問われる時期。悪い流れを引きずる訳にはいかない。

 それにしても、今年のダービーは関東馬が上位人気を占めただけではなく、1週前の登録の時点で除外なしの18頭。最終的にはフルゲート割れというかつてないほどの事態になった。

 ダービーに出走できるだけでも名誉という考え方は古いのだろうか。

 それともどこかで、変な忖度が働いたりしているのだろうか。

 馬券が売れているからいいと言ってしまえばそれまでだけれども、競馬の中身はもちろん、レースの前の段階から話題が溢れるような盛り上がりが欲しい。

 その点では今年のダービーも桜花賞1番人気のサトノレイナスの挑戦があったからこそ盛り上がったが、それがなかったらどうだったのだろうか。

 自分も含めて、今後の競馬の在り方についていろいろ考える時期に来ているのかもしれない。

 これも反省か~

 まずはスカッとした当たり馬券が欲しい。

 

美浦編集局 吉田幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。