競馬日和のシーズン開幕(吉田幹太)

 窓を開けて仕事ができる季節になってきた。

 窓を閉め、カーテンを閉め、厚着で部屋に籠りっきりよりは、この方がうんと気分がいい。

 こうなると花見もしたくなるところ。幸い、自宅近くには桜の名所もある。

 しかし、これはさすがに自重しなければならいか。気の緩み、と言われることには少なからず反発を感じるが、自分自身を守るためと思って、ある程度の線引きはしておかなければ。

 考えてみれば昨年の今頃は無観客競馬の真っ最中。花見どころか、外をうろつくことさえままならないような状況だった。

 今年の大阪杯の登録馬を見ると無観客にならなくて本当に良かったと思う。

 コントレイルとサリオスは2回。そして本格化したグランアレグリアが昨年、お客さんの前で走ったのはたった1回だけだった。

 レースへの影響がどれだけあるのかは分らないが、お客さんの目にさらされる中でレースが行われることの意義は大きい。

 大声が出せない状況下でも、競馬を生で見たいと思うお客さんの熱意。人数が限られているとは言え、やはりいるといないとでは雰囲気が違ってくる。

 更に馬主さんが現場にいるのも大きな要素になるのではないだろうか。

 競馬の場合は決着がついても、その差はコンマ何秒かの勝負。

 目に見えない雰囲気、熱気で結果が変わってくる可能性は十分にあるのではないだろうか。

 昨年、競馬が無観客になった時期はしっかり記憶があっても、緊急事態宣言が何月に発令されたのかはすっかり忘れてしまっていた。

 これも無事に競馬が開催され続けたせいなのかもしれない。

 毎週、週中はトレセンで調教を見て、週末は競馬場へ。

 常にマスクをして、外出先から戻るたびに手洗い。寄り道もできずに自宅との往復ではあっても、その中間は電車で移動して、街中の様子などは確認できる。

 これだけでもストレス発散になり、窮屈な生活も何とか乗り越えられたのかもしれない。

 部屋に閉じ籠りっきりだけではなく、するべき仕事もないひと達とは比較にならないほど恵まれていたような気がする。

 世間で起きていることを忘れがちになってしまうのも仕方ないのか。

 競馬をしているとついつい、世の中で起きていることへの実感が薄くなってしまう。特に去年はそれを痛感するような一年になってしまった。

 それが今回の、一連の問題にも少なからず影響はあったのかもしれない。

 いずれにしても、ここからが大事なのか。この一年はいろいろ学んで、自分自身ももう少しマシにならなければ。

 来週には桜花賞が行われて、ついに競馬の一番いいシーズンに突入。牡馬も牝馬もクラシック戦線は混戦模様で、今年は関東馬にも有力馬が結構いる。

 緊急事態宣言中はできなかった関西所属ジョッキーの美浦での騎乗も解禁されて、先週は松山騎手、今週はルメール騎手が美浦での調教に騎乗。

 今日31日の調教では桜花賞に出走予定のサトノレイナスにも騎乗して、1週前としては素晴らしいフットワークで駆け抜けてきた。

 暗い雰囲気だった昨年とは違って、世間の状況もいいとはいわないまでも悪くはない。

 そして、何より、今のところ桜花賞も皐月賞も、無観客ではなくて、制限しながらでもお客さんを入れて行われそう。

 熱気あふれる激しい勝負をぜひとも見せて欲しい。

 そして、自分が前の前で調教を見て、力を入れて馬券を買う馬に何としても結果を出してもらいたい。

 そして、ぼちぼち、騎手の世代交代も行われないかと願っています。

美浦編集局 吉田幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。