50の手習い(田村明宏)

 諸外国では既にワクチンの接種が始まっているが、正式に認可されていない日本では新型コロナの効果的な予防策や治療法がある訳ではない。そう考えれば全国的な旅行促進策が取られたのはやや拙速だったし、我々自身の危機感が薄れていたのも反省すべきところはある。それでも年末から年明けにかけてこれだけ感染者が増えたのは想定外だったし、残念というほかない。昨年は幸いにして馬券の売り上げが増えたので壊滅的ダメージを受けた訳ではないが、一時的に再開された有観客競馬が再び、無観客になってしまった影響は今後を考えれば不安というほかない。人口集中地域だから当然だが、自分が暮らしている首都圏はいち早く、緊急事態宣言が出された。それに伴って弊社でも開催日にはリモートワークを取り入れている。交代で競馬場に勤務している訳だ。

 通信環境の充実で今ではよほどの山奥でもなければリアルタイムでパドックやレースを見ることができるようになっている。更にグリーンチャンネルの無料放送も手伝って中央競馬の売り上げは落ちなかったが、単なる臨場感というだけでなく生き物である馬の気配は現場で身近に感じとってこそという面はある。それが必ずしも馬券的中につながる訳ではないが、データでは得られない納得感がある。しばらくは無観客開催が続く中で幸いにも観戦が許されているのが我々、競馬マスコミだ。偶然ではあるが、弊社では私も含めて8人がラジオNIKKEIのパドック解説を年明けから担当させて貰っている。

 今年で満50歳を迎えながらここまではパドック解説の経験がなく、そもそも馬の見方とは何か、気配の良し悪しを見ればいいのか、どの馬が一番、早く走れそうなのかを見ればいいのかも分からない自分は一から勉強している段階かもしれない。舌足らずで滑らかな喋りができなかったり、語彙力の乏しさでうまく表現できないもどかしさがありながらも1回毎に少しずつ進歩できればと思っている。パドックで伝えるべきことは何か?手探りで試行錯誤しながらも、紙面で公表した予想とは違う見解になるかもしれないが、少しでも皆さんにヒントを伝えられればと思いながら手習いに勤しんでいる最中です。よろしければ今後もお付き合いをお願いします。

美浦編集局 田村明宏

田村明宏(厩舎取材担当)
昭和46年6月28日生 北海道出身 О型
週明けには栗東トレセンでコロナ感染者が判明、美浦事務所の近くでもクラスターが発生するなどまさに脅威は間近に迫っている状況だ。厳寒期だけに止むを得ないが、今後も感染予防を徹底するほかない。しばらくは辛抱だ。その中で今週の注目馬は中山日曜4Rに出走予定のダイシンウィット。前走は自分がパドック解説を担当したレースに出走し、余裕残しの馬体ながら2着に好走。しかもこれまでの一本調子な走りとは違った形だった。馬体重の減少がなくても上積みはあるはず。