2020年を振り返る(青木行雄)

 2020年も残すところ2週間ほど。今年がこんな1年になろうとは、誰が予想しただろうか。本来なら東京オリンピックも終わっており、様々なドラマが繰り広げられていたはず。楽しみが来年まで残ったと考えれば悪くないのかもしれないが、今の世の中の感じだと、果たして本当に開催できるのやら……。

 競馬の世界もコロナに翻弄されたが、幸いにしてレース自体はスケジュール通りに行われたし、馬券の売り上げに関してはネット投票の普及のおかげでダメージはまったくなし。我々、新聞の業界は競馬場、ウインズの無観客→入場制限の影響を受けてなかなかの苦戦を強いられているが、まだ新聞、週刊誌ともに発行することはできているので、有り難いと考えた方がいいのか。

 お客さんが競馬場に観戦に来れないというのはあまりに勿体なかったが、GⅠを中心にレースは本当に記憶に残るものが多かった。牡馬、牝馬ともに無敗の三冠馬が誕生、アーモンドアイが芝のGⅠ最多勝を記録。先週はソダシが白毛馬として初のGⅠ勝利を達成。それ以外でもグランアレグリアが短距離戦線で無類の強さを発揮。普通にお客さんが来れる状況だったとしたら、三冠最終戦や世紀のドリームマッチとなったジャパンC、大改修前の京都の最終日。このあたりの開催日はどれだけの人が競馬場に詰めかけていたのだろう、ということをふと考えてしまう。

 自分は競馬記者という立場上、コロナ禍でも毎週普通に競馬場へ足を運び、ゴンドラのいい場所で生観戦させてもらっているが、抽選で指定席が当たらないと現場に来れない一般ファンは大変。私も暮れの東京大賞典当日の大井競馬場の指定席に応募したが、あえなく落選してしまった。競馬ブックは南関東版も発行しているので、裏から手を回せば入ることくらいはできるのかもしれないが、知り合いの記者もいないので、ネット投票からのテレビ観戦で楽しみたいと思う。

 今年のベストレースは何だっただろうか。雑誌やらの企画でファン投票でもあれば、断トツでジャパンCということになるのだろう。レース前、後ともに一般のニュースでも結構取り上げられており、三冠馬三頭による最初で最後の対決は注目度抜群。また、結果はその三頭でのワン、ツー、スリー。アーモンドアイの勝利も勿論素晴らしかったが、個人的には最後の最後で3着に食い込んだデアリングタクトの走りに、ちょっとグッときた。

 馬券でいい思いをさせてもらったという点ではフェブラリーS、高松宮記念も印象深いが、いずれも違う競馬場にいたためモニター観戦。目の前で観させてもらったレースとなると、当然三冠達成となった秋華賞、菊花賞は大興奮だったが、ナンバーワンは結構、先週の阪神JFかも。ソダシは札幌から見てきた馬で、自分の中では苦手中の苦手と言える札幌2歳Sで予想(本紙)を的中させてくれた馬。3着に来たユーバーレーベンともども、思い入れは強かった。ソダシは初めての揉まれる競馬でなかなか苦しい立ち回りを強いられたが、間を割って最後は首の上げ下げで見事ハナ差の勝利。レース直後にゴール前のスロー映像が流され、最後にソダシの首がグッと下がって前に出た時の観客の拍手は、数が少ないからこその、何とも言えない温かみがあった。

 コロナの第3波の勢いはまったく衰えない現状。これからが冬本番ということもあり、フリーでお客さんが競馬場に来れるまでにはまだまだ時間がかかりそうな気がするが、とりあえずは無事に競馬が開催されることを祈りたい。今週の朝日杯FSはちょっと微妙なメンバー。有馬記念もジャパンCに比べると正直物足りない顔ぶれではあるが、有馬はやはり特別なレース。何やかんやで盛り上がってくるのは確実だろう。最後はいい予想をして、馬券もいい形で締めくくりたいもの。

栗東編集局 青木行雄

青木行雄(調教取材担当)
昭和44年8月7日生 大阪府出身 A型
1993年入社。坂路調教担当。札幌開催時と西のローカル開催では本誌予想も担当。開催日はMBSラジオ「GOGO競馬サンデー!」、BS11「BSイレブン競馬中継」に出演。先週はGOGO競馬サンデー!内で、青木TMの10万円馬券勝負という特別企画が。この企画は2年前にもあり、その時は張り切ってSNSでも宣伝していたが、結果はひとつも当たらず番組に黒歴史を作ることに。それを踏まえて今回は週刊競馬ブックで軽く書くだけにとどめておいたが、結果は資金を19万ちょっとに増やすことができ、何とか格好はつけられた。あー、良かった。