天は誰に微笑むか(田村明宏)

 週刊誌の狙い馬コーナーでも書かせて貰ったが、今年はやはり特別な年だ。勿論、一般的には新型コロナ禍だが、競馬に関しては歴史に残ることが立て続けに起きた。まずはデアリングタクトによる初の無敗での牝馬三冠達成、そしてコントレイルによる父子での無敗での牡馬クラシック完全制覇。これが限定的ながら久々の有観客開催の中で記録された。そして今週はアーモンドアイが芝GⅠ8勝という新記録に挑戦する。春の安田記念ではグランアレグリアに阻まれたが、今度こその期待がかかる。身近で取材している感触では昨年、圧勝した当時よりも臨戦過程はいいと思っている。ならばもう勝利は確定かと問われればそう単純ではないかもしれない。

 8月の猛暑があって記憶は薄れているが、その前には九州地区に災害をもたらした長梅雨があった。そう、今年の前半は雨が多かったのだ。2011年以降の近10年間、菊花賞終了時点の中央競馬の平地・芝GⅠ14個の中で、良馬場以外で行われたレース数は今年が2017年と同じく6個だった。その2017年から大阪杯がGⅠに昇格したとはいえ、例年は1か2であることが多く、2019年に至ってはクロノジェネシスが勝った秋華賞以外はすべて良馬場開催だった。やはり今年は馬場的にも特別な年だったと言っていいのだろう。アーモンドアイが敗れた安田記念も稍重。3歳春のシンザン記念こそ稍重馬場をものともせずに勝っているが、トビが綺麗な走りからしてパンパンの良馬場こそ本領発揮の舞台なのは間違いない。

 今年のここまでの古馬戦線の流れからアーモンドアイ、クロノジェネシスの牝馬対決に注目が集まるが、休み明けでここ目標の臨戦は同じだし、4歳の後者の成長ぶりを考えると甲乙つけ難いくらいの評価はできる。そこで今週も結果を左右するのは馬場状態に行き着く。秋華賞、宝塚記念とふたつのGⅠを良馬場以外で制したクロノにとって時計がかかる馬場はむしろ歓迎だろう。開幕して1、2週目が残念ながら雨に祟られてしまった4回東京はいつもの秋開催に比べると少し時計がかかるタフな馬場設定になっている。だが、レース結果に影響を与えるのはやはり直前の天気。先述した2017年は天皇賞当日に台風22号が接近しあいにくの不良馬場の中でキタサンブラックが2分8秒3という記録的に遅い時計で勝った。果たして今年はどうか?天は誰に微笑むか。残り4日間は天気予報にも注目して馬券検討したい。

美浦編集局 田村明宏

田村明宏(厩舎取材)
昭和46年6月28日生 北海道出身 O型
気象庁の週間予報によると今後は天皇賞の11月1日まで府中市に雨は降らない見込みだ。もしそうなら9日連続して雨が降らないことになる。今週からBコース使用ということもあり久々に高速馬場の可能性が高い。天皇賞もそうだが、同じ日に行われる国立特別のレッドヴァールにとっても望ましい馬場だろう。良馬場で2勝を挙げている同馬にとって前走の不良馬場は最悪の条件。今度は前進あるのみ。