新潟、東西対決(吉田幹太)

 無観客競馬が来月初旬まで行われることが決定。

 2月下旬から始まったのだから、半年くらい無観客で行われたことになる。

 競馬場に若い世代を取り込もうとしてきたJRAのここ数年のキャンペーンとは真逆の状況だが、売り上げは順調に伸びている。これは長年行われてきた効果が十分にあったともいえるのかもしれないが、世の中が通常に動き出した時こそ真の評価ができるのかもしれない。

 慣れたとはいえ競馬場にお客さんがいないのはやはり寂しい。ダービーでは国歌斉唱など行われたが、ふっとした時に静寂が訪れて、4コーナーでの大歓声もない。

 レースにどれくらい影響があるのかは分からない。馬にいい影響があるという人もいるが、こればかりは何とも言いがたい。

 一方、人間にはいいにしろ、悪いにしろ、影響は少なくないような気がする。

 熱狂がない分だけ、各騎手、特に人気を背負った騎手は冷静に乗れているように感じることが多い。逆に熱狂のない分だけ燃えてこない人もいるのかもしれないが、競馬の場合はプラスに出るかどうかは難しいかもしれない。

 野球、サッカー、そして大相撲などはアドレナリンが出て素晴らしい動きに繋がる印象はあるが、競馬はそもそも馬にどう伝わってしまうのかが難しい。

 それでも見ている側からするとあの熱狂があるから、何かが起こるかもしれない、という期待を抱き、それを跳ね返して勝った人馬を賞賛できるのではないだろうか。

 今週からは新潟、札幌の変則の2場開催が行われる。

 新潟は美浦の方が近いことは近いが、栗東からもほぼ高速だけで来られる便利な競馬場。1週目の想定を見ると3歳未勝利でほぼ半分が関西馬。無観客競馬は勿論だが、この状況だけでもかつてない開催といえる。

 本来なら、西から東からお客さんが来て、場内も例年の夏競馬以上の盛り上がりなのだろうが、残念ながらその状況は見ることができなくなった。

 それでも第3場で行われている東西混合戦以上に、馬も人も集まるのは間違いない。

 意地と意地のぶつかりあいとは行かないまでも、新馬など1、2着馬以外でもどのような着順になるのか非常に興味深い。

 東京だけではなく、再び全国的にコロナの感染者が増えてきた。

 自粛が始まるかと思うと気持ちは沈むばかりだが、まだ梅雨が残っていて蒸し暑くなって外出するのに不快な天気なのも確か。

 ならば、涼しい部屋で、東西対決を楽しむというプラス思考があってもいいのかもしれない。

 ニュージーランドに十数年前に行ったときにはTABなる大手のブックメーカーが街の各所にあり、そこで通常の馬券だけではなく、その月のリーディングジョッキーを当てる賭けや、どこかの厩舎が何勝以上するかなどの賭けもあった。

 今開催で言えば、関東馬と関西馬、どちらが多く勝つかは十分に賭けの対象になりそうだ。

 新潟を狙って大挙してやってくる関西の厩舎は怖いが、美浦のトラックマンである限りは関東馬が勝ち越すことに賭けられるのなら賭けてみたい。

 その関東馬。デキのいい馬をしっかりと見抜いて、お伝えできれば幸い。

 そして、自分もしっかり儲けて、いつものようにはしゃげない分、気持ちだけでも満たされて帰りたいと思っています。

美浦編集局 吉田幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。