この2カ月で思うこと(吉田幹太)

 この2カ月。酒量はガクンと減って、歩数はグンと増えた。

 ほんの少し、部屋の中が整理されて、考える時間は増えたような気がする。

 体重は少し減り、使い道が狭まったお金はそれほど減らなかった。

 緊急事態宣言も悪いことばかりじゃなかったか。

 前向きに捉えられないこともない。

 しかし、貴重な時間が失われたのは間違いなく、新しい生活観なる言葉とともに自粛の圧力がかかりそうなのが気がかりだ。

 密集が危ないのがウィルスの特性のひとつだろうけれど、新型コロナのように症状の出ない人が多いとこんなに厄介だとは。

 人の多いところが嫌いで、避けるようにしていたのだけれど、それでも好んで足を運んでいた場所は大抵、人が集まっていたのだなと気がつかされた。

 野球、ラグビー、映画にライブ。そして相撲など密集の最たるものかもしれない。

 緊急事態宣言中はもちろん、今でもそのほとんどが止まっている。

 仕事で行かなければならない競馬場へはガラガラの電車での通勤に。

 静まり返った府中本町の駅構内、競馬場の周りや競馬場に入ってからもほとんど物音のしない状況で、本当に馬が出てくるのか不思議な感覚になってしまう。

 それでも春の連続GI開催が終わって、宝塚記念で完全にひと段落して夏競馬に。

 ここまで日程通り競馬が行われようとは当初、考えられなかった。

 各国の競馬の置かれている状況を見れば、奇跡といっていいのかもしれない。

 何より、厩舎関係者から感染者が出なかったのは驚きだった。

 しかし、その一方で福島、新潟に1回ずつ出張に行った自分としてはいろいろ感じるところもあった。

 ガラガラの新幹線で現地に移動して、朝晩の食事はホテルの部屋で弁当。そして、競馬が終わるとそそくさと帰る。

 厩舎関係者の方も街に出ることは自粛されていた。

 つまり、福島、新潟で競馬が行われているのに、現地の人と接点はほとんどなく、競馬に興味のない現地の人はそこで競馬が行われているとは想像すらしない状況だった。

 我々の関係者では他県ナンバーだということだけで、後ろからずっとついて来られるようなことがあったらしい。

 競馬が無事に行われることが一番の願いではあるのだけれど、やはり場所を移動して開催するのであれば、現地の人の理解を得るような開催が望ましいのではないだろうか。

 完全な形でお客さんを入れるのは難しいかもしれない。

 それでも人数制限をしながら、競馬場の施設を家族向けにだけでも開放することができないのだろうかと思う。

 このまま無事なら来週にはプロ野球が開幕。Jリーグも始まって、ゴルフも今月中には開幕することになりそうだ。

 ようやくスポーツ観戦できる状況になり、毎日同じような話しか出てこないニュース番組もいくらか見る気にはなりそうだ。

 今は不要不急、マナー、そして新しい生活観などという言葉で、人を縛り付けることが当たり前になっているような気がしてならない。

 道楽を存分に楽しめることが生きること。

 そんな風に思っていただけに、今の状況は本当に怖くて仕方がない。

 パチンコをする人も夜の歓楽街で接客を受ける人も、そんなに悪い人たちではない。

 むしろ、人の行動を平気で監視できるような世の中の方がよっぽど恐ろしい。

 これが悪い夢ならいいのだが……。

 いや、夢であってはならないか。

 史上初の牡馬牝馬三冠馬が出るのかもしれないのだから。

 熱狂の競馬場で強烈なレースを見せて、無観客だったからなどという言葉を吹き飛ばして欲しい。

 そうなれば、ようやく本来の生活が戻ったといえるのかもしれない。

美浦編集局 吉田幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。