心優しきひと達(田村明宏)

 今年はまだ1カ月以上残しているが、ローテーションの関係でおそらく私の出番は最後になるはず。だからあくまでも現時点までということで今年から始まった関東の話題に特化した競馬ブックEASTのツイッターで私がつぶやいた事柄の中から印象に残ったことを振り返ってみたい。

 まず、忘れてならないのは一番多く、579のいいねを頂いた北村宏司騎手の復帰後初勝利を祝ったつぶやき。3月2日中山1Rの未勝利戦で1番人気のタマノカイザーに騎乗し、手応えよく直線に向いたが、外から来たノワールムーティエに寄られて進路をなくして落馬。避けきれない後続の馬に踏まれてしまって大怪我を負ってしまったのだ。そこから復帰まで約5カ月。季節は春を過ぎて夏、場所は猛暑の新潟になっていた。復帰当日の最終レースでネリッサに騎乗した彼は1番人気のユナカイトをゴール寸前で捉えて見事に復帰後、初勝利を飾った。ちょうど最終レースの勝因を聞くために検量室前にいた私が笑顔の北村騎手を撮ると、偶然にもそのうしろに土曜、地上波で競馬中継をしているテレビ東京の関係者も映り込んでいた。勿論、反応が多かったのはそのせいもあるが、コメント欄を読むとやはり復帰を待ち望んでいたファンの声が大きかった。先日も京都で今年のダービージョッキー、浜中騎手が骨折したようにジョッキーに怪我はつきもの。中には馬券を外して野次を飛ばすというような輩もいるが、それはごく一部。暖かい声援の方が多いのだろう。選ばれた人しかできないジョッキーに対してのリスペクトが感じられた。

 そして、いいねの数こそ劣ったが、インプレッションという単純にツイートを見た回数ではほとんど差がなかったのが台風19号から一夜明けた東京競馬場の朝の風景を捉えたもの。今年は秋になって特に関東地方に毎週のように台風が接近し、大雨や強風の被害が多かった。当初は3連休に合わせて土、日、月の3日開催を予定していた東京競馬も土、日の2日が中止になって開催が延期された。このツイートは結果的に競馬が中止になった日曜の朝のものだが、府中在住の私も避難勧告が出る中で不安な一日を過ごした翌朝、まだ半信半疑な中でスタンドに到着し、コースを確認すると台風一過の快晴と1コーナーの向こう側にはクッキリと富士山が見えた。困難な時でも、いや困難な時こそ競馬を楽しみたいというファンの思いがこの反応には感じられた。被災地に行ってボランティア活動をするとか支援金を送ることも可能だが、私達が貢献できることといえばやはり、いつも変わらず的確な情報をお届けすることだと肝に銘じた次第です。

 普段はじかに接することがない競馬ファンのひと達とSNSという手段を使って交流できたように感じる時間が限りなく嬉しい。そこからは毎週、競馬を楽しんでいる心優しいひと達の思いが伝わってきた。少し気が早いが来年も少しでも多くのひと達に話題を提供できるように頑張っていくつもりです。

美浦編集局 田村明宏

田村明宏(厩舎取材担当)
昭和46年6月28日生 北海道出身 O型
本文内で触れた北村騎手は今週、土曜は阪神だが、日曜は中山で騎乗予定。その中で5Rのブラックシャウトに注目したい。木村厩舎の2歳馬らしく、入念に乗り込んで仕上がりは上々。来年まで期待できる好素材だ。