人馬の成長力(山田理子)

 先週木曜の調教終わり、遅い時間帯に最後の最後まで攻め馬に跨っていた森一馬騎手にゆっくりと話を聞く機会に恵まれた。現在26歳(今日3月13日がお誕生日です!)。11年にデビューして9年目となる中堅。先週3月10日までにJRA通算68勝を挙げている。栗東・松永昌厩舎所属で自厩舎のラインスピリット、マジェスティハーツ、ラインルーフとのコンビで有名。人当たりが良く、ジャッジも的確なので、取材陣にも彼のファンを公言している人は多い。交友が始まったのはデビュー2年目の12年2月に障害競走に騎乗することになったのがキッカケ。2年目から3→3→3→7→7→6→8勝と成績を上げ、昨年は自身のキャリアハイ。彼が練習をつける馬が着実に飛越が上達していくのを感じていた。この日、教えてもらったのはスクーリングの重要性。当該競馬場で大体、前日の12時に行われるとのことだが、森一馬騎手の場合は、すべての障害を馬に見せて、最初と最後を飛ばすのがパターン。これをこなすことで人馬ともに本番に向かう気持ち、自信が違うそう。昨年後半からスクーリングに力を入れ出し、結果が伴ってきたという。そういえば、昨年は障害転向が決まった場合でも早い段階で適性を考えて、良化が見込めないようなら断念することが以前よりあると聞いた。レースへの過程のなかで細かな変化の積み重ねが、数字に表れているようだ。
 さらに、話は進んで2月の京都でオープン勝ちを収めたメイショウダッサイの飛越について。余力を持って運び、直線ダートで抜け出す脚が速かったのでレース後に「安心感がありました」と感想を送ったのだが、「乗ってる身としてはまだまだ成長の余地を感じるところがあります」との返答。気になったので続きを聞いてみると「僕が乗っている中で、たとえばマイネルプロンプト(オープン3勝、昨年の中山大障害3着)と比べてみてください。あの馬のレースを観てから、メイショウダッサイを観てみたら、スローやコマ送りでないと分からないかもしれませんが、体の使い方などが全然違うのが分かると思います」とのこと。社に戻って早速見比べると、踏み切り、飛び、着地のすべてにおいて安定感がまるで違うのが分かった。逆に言えば、メイショウダッサイは、まだまだ修正箇所があり、普通なら飛越でスタミナをロスするところが、お釣りを残してレースの終盤に脚を残せていたということ。それはそれで凄いポテンシャルと言えるだろう。春近しの気持ちいい陽射しのもと、自分自身のレースを見る目の甘さを痛感するとともに、若い力の無限の伸びしろ、成長力を頼もしく思う瞬間でした。

栗東編集局 山田理子

山田理子(調教・編集担当)
昭和46年6月22日生 愛知県出身 B型
水、木曜のトレセンではCWをお手伝いしながら障害コース、Bコースを採時。日曜は隔週で坂路小屋へ。調教時間が何より楽しく、予想で最重要視するのは数字よりも生身の馬の比較。人気薄の狙い馬、危ない人気馬を常に探している。09年より関西障害本紙を担当。週刊誌では15年より新たに「注目新馬紹介」のまとめ役を引き継ぎ、新馬の観察に一層力が入っている。