雷神との付き合い方(田村明宏)

 今秋の騎手免許試験を受験して早ければ来春から日本での通年免許を希望しているモレイラ騎手。既にこれで拠点にしていた香港からは撤退しているので試験の結果次第だが、近いうちにルメール騎手やM.デムーロ騎手のような活躍を見せるのは確実だろう。過去2年、短期免許では夏の札幌シリーズだけの参戦だったが、今年は先週から短期免許を取得。身元引き受け調教師が美浦の堀調教師なのでおそらくは東京開催を中心に騎乗していくことになるのだろう。世界の舞台で活躍している名手に対して失礼かもしれないが、中山競馬には初参戦。初コースでの多少の戸惑いがあるかもと疑っていたが、とんだ見込み違いで7勝2着1回の大活躍。大方の期待通りだった。

 今年の勝率が4割1分8厘。連対率5割1分6厘。3着以内率6割1分5厘。いずれもが文句の付けようのない数字で、一般的に1番人気馬の勝率が3割半ばということを考えても特に勝率の高さは際立っている。勿論、この数字を見れば誰でも馬券対象として外せなくなるが、先週でも7勝のうち、1番人気は4回。それ以外も2番人気3回なので人気薄ということはないが、実力馬にただ跨っていただけということではない。同じ騎手の立場なら何とかして死角を探して負かせないかと思うところだが、我々ファンからすれば競い合うライバルではないのだし、これだけ信頼が置けるなら馬券対象から外れるケースよりも圏内に来た時の買い時を考えた方が早そうだ。

 今年の38勝の中でも3連単の払い戻しが3万円を超えたケースは8回。1着固定のフォーメーションで買えば相手が少し多くなっても十分に狙っていける。中でも今年の最高配当になったのが先週ロードカナロアMでの3連単、286420円。11頭立てで自身が1番人気だったことを考えるとなかなかいい配当だが、2、3着が9、11番人気だから普通に相手として選べる訳ではない。モレイラ騎手の騎乗パターンは4角ではいつも勝負圏内にいるが、そこまでの運びは一様ではなく変幻自在。騎乗馬のリズムとレース展開に合わせている。当該レースを分析するとレース前の予想としては逃げ馬不在でスローが見込まれたが、現実にはプレシャスエースが1000m56秒9というハイペースで逃げてインで脚をタメたプロディガルサンが勝って2、3着も前後する位置にいたキャプテンぺリーとウインフェニックスが飛び込む形に。レース前の展開予想とは異なるが、結果的にモレイラ騎手の判断が的確だったということになる。逆に2番人気のテンクウは後方のまま、流れに乗れず、3番人気のキロハナは先行して失速してしまった。レースは生き物だから位置取りは不明なことが多いが、過去の内容からおおよその脚質は予想できる。普通に考えれば展開上、先行有利と思われるが、現実には差し脚質のプロディガルサンが勝ち、上位には同様の脚質の馬が来たのだから狙い方としてはモレイラ騎手の騎乗馬と同じようなレース運びをする可能性が高い馬(特に人気薄の場合)を相手に選んでみるというのが攻略法ではないだろうか。逆に言えば違う脚質の馬は人気になっても疑ってみるという考え方。勿論、脚質不明の新馬戦はその限りではない。

 いずれにしてもこれから中央競馬ファンにとって長い付き合いになりそうなモレイラ騎手。サンプルを増やして研究の余地はあるが、できれば仲良くして少しでも恩恵に与りたいものだ。

美浦編集局 田村明宏

田村明宏(厩舎取材担当)
昭和46年6月28日生 北海道出身 O型
今週はそのモレイラ騎手が騎乗する西湖特別のジュンスターホースに注目。東京コース向きの後方待機馬。これが1着になると仮定すれば相手も後方待機の人気を選べば高配当を狙えるかも。