春近し、トレセン風景(山田理子)

2月28日(水)、栗東トレセンに6時21分着。0℃。車を降りて馬場を横切り、中央の調教スタンドへ。温度計が示す数字は0でも砂は凍っておらず、空も白んで、春が近づいているのを実感する。騎手の引退、調教師の引退・勇退は2月末日、騎手のデビュー、調教師の開業は3月1日をもってとなるため、トレセンの風景は先週までと変わりないが、明日になれば新規開業する4厩舎の真新しい厩舎服が存在感を示し、見習い帽を被ったニューフェイスの騎手が誕生して、フレッシュな風景に様変わりすることだろう。

さて、今週は中山の弥生賞と阪神のチューリップ賞がメイン。7時01分、ラッキーライラックがナンヨープルートーとともにCWコース入り。6Fで2馬身半ほど後ろを行き、リズミカルにバネを利かせて体を動かして追走。スーッと内に入れて体を併せ、1F標から3馬身突き放した。体に太目もない。阪神ジュベナイルF出走前のフォトパドックと見比べると、キ甲が抜けて背中が大人の曲線になり、肩、腰、尻、脚の筋肉が隆起しているように思う。過去10年間に出走した2歳女王7頭の成績がチューリップ賞で2、1、2、1、3、9、1着というデータを踏まえても、3着以内の可能性は高いと見る。
7時25分、リリーノーブルが川田騎手を背にCWコースへ。こちらはレクイエムを5Fで2馬身半ほど追走。直線は馬なりでもグンとギアが上がって11秒5。1Fだけで1秒ち切ってしまった。首から背中、尻にかけての長いラインのバランス、連結の良さはルーラーシップ産駒らしい気品。この産駒はいい意味での重さと力強さがあるのも特長で、相手やペースに応じてどうこうより、自分のフォームが整ったときに圧倒的な加速力を見せる。
今、トレセンで凄いのがダノンプレミアム。1週前の追い切りはこれまで見てきた調教の中でも3本の指に入る衝撃だった。馬の後ろで折り合いをつけた調教。前も後ろも脚の出方が滑らかで、重量感があるのに軽さがあり、反応の早さも絶品。1F標で時計を押し、ほんの僅かストップウォッチを確認していた間に2馬身ほど抜け出してケロリとした顔をしている。何と脚の速いこと!!何と心肺機能の高いこと!!

2月末日の栗東トレセンにはこんな感動があります。

栗東編集局 山田理子

山田理子(調教・編集担当)
昭和46年6月22日生 愛知県出身 B型
水、木曜のトレセンではCWをお手伝いしながら障害コース、Bコースを採時。日曜は隔週で坂路小屋へ。調教時間が何より楽しく、予想で最重要視するのは数字よりも生身の馬の比較。人気薄の狙い馬、危ない人気馬を常に探している。09年より関西障害本紙を担当。週刊誌では15年より新たに「注目新馬紹介」のまとめ役を引き継ぎ、新馬の観察に一層力が入っている。