端境期(田村明宏)

 田圃が黄金色に輝き、稲が実って穂を垂れる。都会ではあまり見られなくなったが、毎週、通っている美浦トレセン近辺や関東地方でもちょっと郊外に出れば見られる風景。9月から10月にかけては田園地帯では稲を刈り入れ、収穫する忙しい季節だ。米余りなどといわれる昨今はあまり関係ないかもしれないが、前年の米の在庫が底をついて新米の収穫までは少し待たなければならない時期は端境期(はざかいき)という。世間に流通する米がやや品薄になるということだ。北海道シリーズを含めて全国でローカル競馬が行われた夏開催が終わって秋のGⅠシーズンが開幕されるまでの2場所開催。3歳未勝利戦が終了して2歳馬が続々と入厩して在厩馬の入れ替えが頻繁に行われるこの時期は中央競馬にとっても端境期なのかもしれない。

 6月から7月にかけての空梅雨とそれに反比例するような8月の長雨。酷暑を免れたのは有り難かったが、野菜の不作など農業への不安は少なからず今後も心配。昨年の落馬事故以来、長期休養していた三浦騎手が札幌で無事に復帰。その後の活躍はご存知の通り。デビュー2年目の女性騎手、藤田菜七子の活躍。今年のデビュー組では武藤雅騎手の成長振りも目についた。新種牡馬オルフェーヴル産駒からは早くも重賞勝ち馬が誕生。牝馬ロックディスタウンは馬格に恵まれ、半姉キャットコインを上回る逸材と期待される。福島デビュー組ではこれも牝馬ノームコア。おそらく簡単には破られない夏の福島芝1800mでの1分49秒1の好時計勝ち。その後のアスター賞も当然ながら勝ち上がってこの2頭がどこで対決するかは楽しみだ。前哨戦のフォア賞が案外だったフランス遠征のサトノダイヤモンドは重馬場が応えたようだ。今年は強力ライバルがいるだけに容易ではないだろうが、凱旋門賞での巻き返しに期待したい。春のクラシックを席巻した藤沢和厩舎の牡牝はレイデオロの方は今週の神戸新聞杯を叩いて、ソウルスターリングの方は休み明けから、古馬に挑戦。距離適性も考慮に入れてのものだろうが、こういう姿勢は大いに歓迎したい。

 3連休に合わせるように通過した台風18号は各地に傷跡を残したが、幸いにして中央競馬は無事に開催された。東西で行われた3歳馬のトライアルはいずれも新星が誕生。また新たな展開が予想される。台風一過、19日の東京の空は雲ひとつない快晴。あの嵐が何もなかったかのように空気も澄んで爽やか。もう収穫の秋は間近だ。あと2週で始まる東京開催では既に有力な2歳馬達がスタンバイしているという。夏の天候不順を取り戻すような秋晴れの下での新たなドラマを期待したい。

美浦編集局 田村明宏

田村明宏(厩舎取材担当)
昭和46年6月28日生 北海道出身 O型
明け4歳で地味だが、確実に地力強化させている九十九里特別に出走予定のウインヴォラーレ。ここ2戦は現地滞在の札幌競馬だが、「馬体がひと回り大きくなったので今回は輸送してもあまり減らないと思う」と手塚師。現級勝ち馬ではあるが、成長力があるステイゴールド産駒だけに力強さを増した走りに注目する。