朝日杯vsラジオNIKKEI杯の22年(水野隆弘)

 暮れの2歳ステークスが現在の朝日杯フューチュリティS(朝日杯3歳S)、阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神3歳牝馬S)、ラジオNIKKEI杯2歳S(ラジオたんぱ杯3歳S)の3つに整理されたのが1991年のこと。その後、ダートグレード競走が整備された1997年には川崎の全日本2歳優駿(同3歳優駿)が加わり、牡、牝、ダート、長距離の4カテゴリが揃った。1991年の改革を整理すると、牡馬の1600m戦が朝日杯3歳Sに一本化され、それまでの阪神3歳Sが阪神3歳牝馬Sとなり、1600mのラジオたんぱ杯3歳牝馬Sが牝馬限定を取り払われて2000mのラジオたんぱ杯3歳Sとなる。新生第1回の勝ち馬は朝日杯3歳Sがミホノブルボン、阪神3歳牝馬Sがニシノフラワー、ラジオたんぱ杯3歳Sがノーザンコンダクトだから、それぞれ立派なクラシック候補を送り出し、改革は成功した。

 それから22年、今年でその体制もひと区切り。来年からは朝日杯FSが阪神に移動し、代わりにラジオNIKKEI杯2歳Sが中山に移ってホープフルS襲名という変更が行われるのはご存知の通り。朝日杯については先週の宇土さんのコラムを参照されたい。今回はそれを受けて(ようやくリレーコラムらしくなってきました)、91年以降の朝日杯FS、阪神JF、ラジオNIKKEI杯2歳Sを並べて振り返ってみたい。それぞれの勝ち馬のその後のG1級レースの勝ち鞍、負けたが後にG1級レースに勝った馬名を並べてみる。その後に特に実績のない年、レースは取り上げない。

【1991年】
[阪神3歳牝馬S]ニシノフラワー(桜花賞、スプリンターズS)、3着シンコウラブリイ(マイルチャンピオンシップ)
[朝日杯3歳S]ミホノブルボン(皐月賞、東京優駿)

【1992年】
[朝]2着ビワハヤヒデ(菊花賞、天皇賞(春)、宝塚記念)
[ラジオたんぱ杯3歳S]ナリタタイシン(皐月賞)

【1993年】
[阪]ヒシアマゾン(エリザベス女王杯)
[朝]ナリタブライアン(皐月賞、東京優駿、菊花賞、有馬記念)

【1994年】
[ラ]タヤスツヨシ(東京優駿)

【1995年】
[阪]2着エアグルーヴ(優駿牝馬、天皇賞(秋))
[朝]バブルガムフェロー(天皇賞(秋))
[ラ]2着イシノサンデー(皐月賞)、3着ダンスインザダーク(菊花賞)、11着タイキフォーチュンUSA(NHKマイルC)

【1996年】
[阪]メジロドーベル(優駿牝馬、秋華賞、エリザベス女王杯×2)、4着シーキングザパールUSA(NHKマイルC、モーリスドギース賞G1)
[ラ]メジロブライト(天皇賞(春))

【1997年】
[朝]グラスワンダーUSA(有馬記念×2、宝塚記念)、2着マイネルラヴ(スプリンターズS)、4着アグネスワールド(アベイドロンシャン賞G1、ジュライCG1)
[ラ]2着キングヘイロー(高松宮記念)

【1998年】
[阪]6着ウメノファイバー(優駿牝馬)
[朝]アドマイヤコジーン(安田記念)
[ラ]アドマイヤベガ(東京優駿)

【1999年】
[阪]4着チアズグレイス(桜花賞)
[朝]エイシンプレストンUSA(香港マイルG1、クイーンエリザベス2世CG1×2)、8着ノボジャック(JBCスプリント)

【2000年】
[阪]テイエムオーシャン(桜花賞、秋華賞)、10着ネームヴァリュー(帝王賞)
[朝]10着カルストンライトオ(スプリンターズS)
[ラ]アグネスタキオン(皐月賞)、2着ジャングルポケット(東京優駿、ジャパンCG1)、3着クロフネUSA(NHKマイルC、ジャパンCダート)

【2001年】(この年より阪神ジュベナイルフィリーズ、朝日杯フューチュリティS、ラジオたんぱ杯2歳Sに改称)
[阪]2着アローキャリー(桜花賞)
[朝]アドマイヤドン(JBCクラシック×3、南部杯、フェブラリーS、帝王賞)
[ラ]3着アドマイヤマックス(高松宮記念)

【2002年】
[ラ]ザッツザプレンティ(菊花賞)

【2003年】
[阪]5着スイープトウショウ(秋華賞、宝塚記念G1、エリザベス女王杯)
[朝]2着メイショウボーラー(フェブラリーS)、13着スズカマンボ(天皇賞(春))
[ラ]コスモバルク(シンガポール航空国際CG1)

【2004年】
[阪]3着ラインクラフト(桜花賞、NHKマイルC)
[ラ]ヴァーミリアン(川崎記念×2、JBCクラシック×3、ジャパンCダートG1、東京大賞典、フェブラリーSG1、帝王賞)

【2005年】
[阪]3着フサイチパンドラ(エリザベス女王杯)、6着コイウタ(ヴィクトリアマイル)、16着グレイスティアラ(全日本2歳優駿)
[ラ]2着アドマイヤムーン(ドバイデューティフリーG1、宝塚記念G1、ジャパンCG1)

【2006年】(この年よりラジオたんぱ杯2歳SはラジオNIKKEI杯2歳Sに改称、阪神JFは新設の阪神外回り1600mに変更)
[阪]ウオッカ(東京優駿、安田記念G1×2、天皇賞(秋)G1、ヴィクトリアマイルG1、ジャパンCG1)、2着アストンマーチャン(スプリンターズSG1)、4着ローブデコルテ(優駿牝馬)、8着ピンクカメオ(NHKマイルC)
[朝]ドリームジャーニー(宝塚記念G1、有馬記念G1)、2着ローレルゲレイロ(高松宮記念G1、スプリンターズSG1)
[ラ]2着ヴィクトリー(皐月賞)、5着アサクサキングス(菊花賞)

【2007年】
[阪]トールポピー(優駿牝馬)、6着レジネッタ(桜花賞)
[朝]3着キャプテントゥーレ(皐月賞)、9着エーシンフォワードUSA(マイルチャンピオンシップG1)

【2008年】
[阪]ブエナビスタ(桜花賞、優駿牝馬、ヴィクトリアマイルG1、天皇賞(秋)G1、ジャパンCG1)
[ラ]ロジユニヴァース(東京優駿)

【2009年】
[阪]アパパネ(桜花賞G1、優駿牝馬G1、秋華賞G1、ヴィクトリアマイルG1)
[朝]ローズキングダム(ジャパンCG1)、2着エイシンアポロンUSA(マイルチャンピオンシップG1)
[ラ]ヴィクトワールピサ(皐月賞G1、有馬記念G1、ドバイワールドCG1)、3着ダノンシャンティ(NHKマイルCG1)、4着ヒルノダムール(天皇賞(春)G1)

【2010年】
[阪]2着ホエールキャプチャ(ヴィクトリアマイルG1)、4着アヴェンチュラ(秋華賞G1)
[朝]グランプリボス(NHKマイルCG1)、2着リアルインパクト(安田記念G1)、4着サダムパテック(マイルチャンピオンシップG1)

【2011年】
[ラ]2着ゴールドシップ(皐月賞G1、菊花賞G1、有馬記念G1、宝塚記念G1)、15着ハタノヴァンクール(ジャパンダートダービー、川崎記念)

【2012年】
[阪]7着アユサン(桜花賞G1)、10着メイショウマンボ(優駿牝馬G1、秋華賞G1、エリザベス女王杯G1)
[朝]ロゴタイプ(皐月賞G1)
[ラ]エピファネイア(菊花賞G1)、3着キズナ(東京優駿G1)

 阪神外回り1600mに変更された阪神JFから名牝が続々と現れたのはご存知の通りだが、近年は勝ち馬のその後の故障などもあったためやや低調。東京優駿=日本ダービー馬は朝日杯からはナリタブライアンを最後に出ておらず、一方のラジオNIKKEI杯は勝ち馬から3頭、2着と3着から各1頭出ている。

 全体としてG1級勝ち馬出現数は、阪神JFは内回りの15年間に勝ち馬から4頭、2着以下から12頭、外回りの7年間に勝ち馬から4頭、2着以下から8頭。将来性を占う点では明らかに信頼性が増している。朝日杯は勝ち馬から11頭、2着以下から13頭、ラジオNIKKEI杯は勝ち馬から11頭、2着以下から15頭が後にG1(級)レースに勝っている。朝日杯はクラシック直結の例こそ少ないが、その後の古馬戦線で復活する者が少なくなく、印象ほど悪くない。ラジオNIKKEI杯は1着アグネスタキオン、2着ジャングルポケット、3着クロフネUSAの2000年の印象が強烈過ぎるという面もある。かつてサンデーサイレンスUSA産駒のクラシック候補が2歳戦を軽く済ませて3歳になってからフル稼働することで成功した。そのパターンがディープインパクト産駒にもあてはまることは明らかになってきた。来季からの2歳戦改革の成果は、いかに早い時期からディープインパクト産駒を引っ張り出せるかにかかっていて、京都2歳SやいちょうSの重賞格付けはそれを見越してのものではあるだろう。

栗東編集局 水野隆弘