季節毎のお買い得(山田理子)

 「週報(週刊競馬ブック)買ったらさ、一番最初にここを見てるんだよ」
 毎年恒例となったセレクトセール見学へ向かう機中。もう長い付き合いになるSY先輩(E社)が私に言う。慣れた手つきでペラペラとページをめくると、素早く「先週の中央競馬勝ち馬・種牡馬別一覧」に行きつく。その週の気候や馬場状態を踏まえたうえで、どの種牡馬の産駒がどのような状況下で好走しているのか整理する作業を続けていて、まとめた資料は2年間分にもなるという。
 「普段そんなに固め勝ちしないデュランダル産駒が3勝もしてるでしょ。何でかっていうと、お父さん同様に決め手が持ち味のタイプが多いから、今みたいに差しが決まるような馬場になってこないとつらいんだよ」と。
 ふむふむ。素直なだけが取り柄の私は感心しきり。翌週の2歳未勝利戦では外差しのイメージを膨らまして、5番人気単勝16.1倍の同産駒ルリシュブールに○。2週前のデビュー戦は届かずだったのに、読み通りズバッと追い込みが決まり、馬単4,740円を的中した。

 それから10日ほどたった時、タイムリーにデータ班・坂井直樹があるデータを持ってきた。何とレアな気温別の産駒成績。坂井は6月11.12日号の週報における編集後記でステイゴールド産駒について取り上げ、6月の芝の単勝回収率が177%にもなることに言及しているが、これも同産駒が気温の上昇にも強いことを示すものだった。京都競馬場で39度を記録した7月10日にステイゴールド産駒が4頭(エムエスワールド、コスモディセント、スマートリバティー、ユキノサイレンス)が馬券に絡んだことが発端となって調べ上げたようだ。
 芝の勝率順ベスト3(08年~10年、出走回数10回以上)
○トータル
1位Falbrav 0.300
2位ハーツクライ .267
3位Empire Maker .214
○30度超
1位ディープインパクト .177
2位キングカメハメハ .138
3位パラダイスクリーク .137
○33度超
1位ハーツクライ .353
2位キングカメハメハ .207
3位サッカーボーイ .200
○35度超
1位キングカメハメハ .200
2位ステイゴールド .182
3位サクラバクシンオー .167

 競走馬にはつら過ぎる35度超えの1、2位について思考をめぐらせる。キングカメハメハはそもそも出走頭数、回数が多い。以前、種牡馬見学した時に種付けが上手なのだと聞いたことがあるが、それが種付け頭数の多さにつながり、数的優位とも層の厚さとも表現できそう。芝、ダート、距離を問わず、また、シーズンを通して勝利数に波がないオールラウンダーぶり。夏に強いというよりはどんな環境でも数字を稼げるということだろう。
 坂井が「6月のステイゴールド」と評したステイゴールド産駒は、やはり暑さに強いようだ。総じて小ぶりで無駄のない軽い造りなので、猛暑のなか強い調教を課さなくても仕上がりやすそうだし、また、気持ちの面でもピリッとしたタイプが多いので、走ることへの意欲を保っていられるのかもしれない。夏場のパドックを見て毎年思うが、体が大きくなくて無駄肉もなくて、気合が乗っている馬がよく好走する。その逆に太くて厚ぼったくてモッサリしているのは、まず厳しい。

 SY先輩にも、坂井からも面白いことを教わった。ひとまず週ごとの最多勝種牡馬に注目して、自分なりに何か理由づけを始めてみることにした(月曜ツイートしてます)。続ければ何か発見があるかもしれない。馬券になるネタを掴んだ際には、この場でまたまたお話できるかもしれない。

 最後に。9月はどうなのか。

 2010年9月に10勝以上したのは、
キングカメハメハ、シンボリクリスエス、フジキセキ、マンハッタンカフェ(12勝)、アグネスタキオン、スペシャルウィーク(10勝)の6頭だった。
 ちなみにディープインパクトの産駒は6月=2勝、7月=1勝、8月=3勝、9月=4勝、10月=10勝、11月=13勝、12月=8勝。昨年は10月になってデビューする産駒のレベルがアップ。10月第1週から11週連続で新馬戦勝ちしている。ディープ産駒は2歳も、3歳も秋に向けて調教ピッチを上げているところ。今年もシーズン真っ盛りに猛攻があるのでは?。

栗東編集局 山田理子