WIN5について落ち着いて考えてみよう(水野隆弘)

  4月24日にWIN5=5重勝が記念すべき第1回の発売。7,279,317票を売り上げて的中は663票、配当が810,280円。みなさんの成果はいかがだったろうか。競馬場の専門紙記者室ではひとり熟考して勝負に出た者、「会社」を組んで多点数を購入した者、遊びでちょろっと買ってみたという者など、多くが何らかの形で参加していた。私はブック当日版の「この一頭血統から推す」とかいうコラムにしたがって京都10R、東京10R、京都11Rを選び、新潟は吉田幹太のポツン本命、皐月賞はステイゴールド産駒3頭という3点買いだったが、遊びとはいえこれは走る前から絶望的。それはさておき、単勝人気で1→3→3→3→4と入ったので、「途中まで惜しかった!」「3つは当たってるのに」という人は少なくなかった。「手が届きそうな80万」という結果は、多くのファンに「来週こそは」と思わせたのではないだろうか。
 ここでちょっと冷静になって、各馬券の「1票の格差」について考えてみたい。話を単純にするために、すべて16頭立て、各馬勝つチャンス(馬券に絡むチャンス)は同じということを前提として、各式に何通りの目があるか書き出してみよう。単勝・複勝は16通り、以下、枠連36、馬連120、馬単240、3連複560、3連単3,360、5重勝(WIN5)1,048,576となる。つまり単勝と5重勝では1,048,576÷16=65,536倍の「1票の格差」があるわけだ。
 では、現実の投票に即して考えてみたい。まず単勝1点買いなら確率は16分の1。全組み合わせを1票でカバーする割合は1÷16で6.25%となる。3着に入れば良い複勝はその3倍なので16分の3、カバー率は18.75%。枠連は全36通り。6点買いを標準とすると6分の1、カバー率は16.67%なので、複勝並みに当たりやすい。馬連は120通りの9点(競馬ブック本紙予想の標準点数=以下同じ)で13.3分の1、カバー率7.5%、馬単なら240通りの15点で16分の1、カバー率6.25%となる。本紙予想のレース的中率のデータは手許にないが、トラックマンの個人予想は馬連6点、馬単12点で40%前後のレースが的中しているから、本紙予想の場合はそれを上回る数字になるだろう。私はもっと当てるぞという人もいるかもしれないが、しかし、それでも半分当てるのが人知の及ぶ限界といえるのではないだろうか。3連複から先はいわゆるエキゾチックベット、狙って当てるのは難しい馬券となる。3連複は560通りで10点として56分の1、カバー率1.79%、3連単は3,360通りで60点予想ならやはり56分の1、カバー率1.79%となる。2%弱のカバー率は予想によって大きくすることができるから、難しいながらもまだ当てやすく、穏やかな馬券といえる。
 しかしこれが5重勝となると、もう桁が違う。前記の通り16頭立てなら16の5乗だから1,048,576通り。1点買いとか3点で当てようというのは論外だが、点数を増やせば何とかなるかというと、どうだろう。全レース2頭選択とすると2の5乗で32点、3頭選択で243点、4頭選択で1,024点となるが、1,024点買ったとしても全体の1,024分の1、カバー率は0.09766%と3連単60点買いの18分の1にしかならない。点数を増やしたことによる懐への応え具合に比べると、効果はそれほど上がらないわけだ。川で砂をすくって片手に砂金が入っているかどうか、両手ですくえばどうかという違いでしかない。もちろん、予想によってある程度絞り込むことは可能だが、絞って堅く収まれば当然配当は安くなる。いずれにしても、相手にする数字が巨大すぎるという事実は変わらないといえるのではないだろうか。
 どうも5重勝へのネガティヴキャンペーンのようになってしまったので、最後にWIN5の長所を超高額配当以外の部分でひとつ挙げておきたい。賭けとしては難しすぎても、クジとして考えれば、約25%という控除率は、「宝くじ」や「toto」に比べて非常に低い。これは大きなアドバンテージといえるだろう。まあ、当たらなければ、その恩恵にもあずかれないわけなんですが。

栗東編集局 水野隆弘