有馬記念を考える(山田理子)

 さて、オーラス。有馬記念を考える。
「三冠馬オルフェーヴルは古馬を制することができるのか」

 三冠馬の有馬記念の成績は
84年シンボリルドルフ  1番人気1着
94年ナリタブライアン  1番人気1着
05年ディープインパクト 1番人気2着
(いずれも中山、東京、京都での三冠)

 それぞれの年の日本ダービー翌週から有馬記念前週までの世代別重賞勝利(平地古馬混合競走、牝馬限定戦及びダートを含む)は、
   3歳 4歳 5歳 6歳 7歳以上 
84年  3  17  7  3  0   
94年  10  13  7  3  2   
05年  3  13  16  5  4   
11年  4  17  18  5  2   

 過去10年間で3歳馬が有馬記念を制した年のそれは
   3歳 4歳 5歳 6歳 7歳以上 
01年  6  13  15  3  6   
02年  5  12  17  9  0   
10年  8  15  11  6  5   
 勝ち馬は01年マンハッタンカフェ、02年シンボリクリスエス、10年ヴィクトワールピサ。※満年齢(新表記)で統一、比較対象レース総数が年によって違う点はご承知おきください)。

 最も3歳が勝っていたのは今年のダブルスコア以上の「10勝」を挙げたナリタブライアン(94年勝ち馬)世代。ナリタブライアンが他馬を子供扱いして皐月賞を3馬身半、日本ダービーを5馬身、菊花賞を7馬身の差でぶっち切ったので1強のイメージしかないが、ダービーで5馬身、菊花賞で7馬身4分の3差離されたエアダブリンがステイヤーズSをレコード勝ち。菊花賞で1秒3離されたスターマン(京都新聞杯ではブライアンを負かして大金星)が鳴尾記念(当時2500m)を4馬身差で圧勝しており、それがいずれも菊花賞の直後のパフォーマンス。この年の有馬記念はナリタブライアンとヒシアマゾンが1、2着に入り、76年、83年に続くレース史上3度目の3歳馬のワンツーだった。ヴィクトワールピサ(10年勝ち馬)世代はブライアン世代に次ぐ8勝で、11月半ばから1カ月の間にエリザベス女王杯、ジャパンカップ、ステイヤーズS、鳴尾記念、中日新聞杯を制する猛攻。4歳になった今年も日経新春杯、京都記念、中山記念、大阪杯、天皇賞・春など中長距離路線はほぼこの世代がかっさらい「最強世代」といわれている。
 さて、今年の3歳の古馬混合重賞勝ちはリアルインパクト(安田記念)、アヴェンチュラ(クイーンS)、ロードカナロア(京阪杯)、レッドデイヴィス(鳴尾記念、ちなみに1~4着が3歳馬)の4頭。勝ち馬率6.15%(4勝、65頭出走)はディープインパクト(05年勝ち馬)世代の勝ち馬率5.45%(3勝、55頭出走)こそ上回るが、あらら、低い部類に入ってしまう。
 しかし、ブエナビスタに対して強調点が。ブエナビスタはデビューから(9.8.3.2)だが、馬券圏内に入ったレースで後ろから差されたのは2頭しかおらず、それがオルフェーヴルと同じステイゴールド産駒のナカヤマフェスタとドリームジャーニーなのだ。今回、どちらが前のポジションになるかは微妙だが、「前を捉えられず」でなく、「後ろから差されて」の敗戦はこの馬にとってはいわば完敗の形といえ、苦手な血統とはいえるかも知れない。
 それから、状態面。一昨年にこの舞台でブエナビスタを破った全兄ドリームジャーニーは3歳秋当時はまだ弱さもあり、菊花賞(5着)の後は「神戸新聞杯から中3週での3000mが応えて疲労回復に時間を要した」との調教師によるコメントがあったが、弟は三冠を走り切ってなお元気はつらつ。兄が3歳シーズンは410K台にとどまり古馬になって力をつけていったが、こちらは夏を挟んで16K、神戸新聞杯を使って更に6Kと体が大きくなり、右肩上がりの成長曲線。兄より早い段階で古馬を打ち負かす可能性は大いにある。
 そして、展開。
  前半3F 1000m 上がり5F
84年 36.8  1.01.5 12.3-12.2-12.0-11.7-11.5
94年 34.9   58.8 12.3-13.3-12.6-11.7-12.4
05年 36.2  1.01.6 12.0-12.3-12.0-11.4-12.1

01年 37.1  1.02.6 11.8-11.5-11.3-11.3-12.0
02年 37.3  1.02.1 11.5-11.8-11.4-11.7-12.7
10年 36.5  1.02.0 11.5-12.0-11.7-11.1-11.8

 全般に遅いペースが多く、昨年は中盤でラップが落ちて1000m通過が同日1000万より遅い1分2秒0だったが、アーネストリーが出てくればペースは一転。「万全の状態でなかった」というオールカマーが1分0秒5だったことを踏まえても、1000m通過が1分1秒以上になることは考えづらい。先週の中山の芝のレースで逃げた馬の連対はゼロ。差しが決まる馬場でもある。今年のペースなら末脚勝負の決着になるのではないか。

 ブエナビスタ?オルフェーヴル?トーセンジョーダン? それとも? 結果はいかに?

 追記:それにしてもシンボリルドルフの中山で上がり3F12.0-11.7-11.5は凄いラップですね。

栗東編集局 山田理子