史上最大のシャッフル(宇土秀顕)

 いよいよダービーウイークを迎えました。クラシック第一弾の皐月賞で形成された勢力図は、今週末の日本ダービーに引き継がれるのでしょうか、それとも、ダービーではまた新たな勢力図が描かれることになるのでしょうか……。

 さて、ここで思い出されるのが、史上初めて皐月賞とダービーの上位5頭がまったく同じメンバーになった2016年のことです。改めて、当時の結果を振り返ると……。

皐 ①ディーマジェスティ
  ②マカヒキ
  ③サトノダイヤモンド
  ④エアスピネル
  ⑤リオンディーズ

ダ ①マカヒキ
  ②サトノダイヤモンド
  ③ディーマジェスティ
  ④エアスピネル
  ⑤リオンディーズ

 皐月賞のリオンディーズは4位入線→5着降着でしたが、どちらにしてもここで扱う記録に影響はありません。

 それにしてもこの記録が史上初というのは、少々意外に思えました。何しろ、春2冠のレース体系が確立されて80余年。〝長い歴史の中で一度くらいは……〟と、当初は疑ってみたのですが、一年一年、調べてみてようやく納得。両レースの上位5頭がまったく同じ顔ぶれだった年は、やはり、それまでに一度もなかったのです。

 ちなみに、この記録に最も近かったのが1995年。下記の通り、この年は皐月賞とダービーの上位4着までが同じメンバーでした。

皐 ①ジェニュイン
  ②タヤスツヨシ
  ③オートマチック
  ④ホッカイルソー

ダ ①タヤスツヨシ
  ②ジェニュイン
  ③オートマチック
  ④ホッカイルソー

 ところでこの逆、つまり、皐月賞とダービーの上位5頭がまったく違う顔ぶれだった年はあるのでしょうか……。記録を遡ってみたところ、こちらは1961、1966、2004、2009年と過去に4回ありました。4回あるのだから〝同じ顔ぶれ〟よりは珍しくありません。とはいえ、約80年の歴史の中で4回と考えれば、これらもレアケースであることに変わりはないでしょう。

 それら4回を振り返ると、1961年は皐月賞馬がダービーに不出走、1966年と2004年は、逆にダービー馬が皐月賞に不出走でした。それが勢力図が大きく書き換えられた主因であることは間違いないでしょう。

 ただ、2009年だけは皐月賞馬がダービーにも出走、ダービー馬も皐月賞に出走していました。下記の通り、皐月賞馬アンライバルドはダービーで12着、ダービー馬ロジユニヴァースは皐月賞で14着、どちらも、もう片方のレースでは二桁着順に終わっているのです。

         皐 ダ
アンライバルド  ①→⑫
トライアンフマーチ②→⑭
セイウンワンダー ③→⑬
シェーンヴァルト ④→⑥
ベストメンバー  ⑤→不

ロジユニヴァース ⑭→①
リーチザクラウン ⑬→②
アントニオバローズ⑨→③
ナカヤマフェスタ ⑧→④
アプレザンレーヴ 不→⑤

 2009年といえば良馬場だった皐月賞に対し、ダービーは勝ち時計2分33秒7の極端な不良馬場。この年に起こった〝大シャッフル〟は、馬場状態に起因するところが大きく、もしダービーも良馬場だったら、また違った結果が出ていたと思われます。

 とはいえ、それも推測の域を出るものではありません。いずれにしても、皐月賞からダービーにかけて史上最大のシャッフルが巻き起こった年をひとつだけ挙げるなら、この2009年ということになるでしょう。

 今年は皐月賞4着アドマイヤマーズが不出走なので、上位5頭が同じ顔ぶれになる可能性は既になくなっています。また、皐月賞の1~3着はかなり強力ですから、上位5頭がまったく違う顔ぶれになる可能性もほぼゼロに近いと考えます。まあ、どちらも滅多に起こらないことなので、ここで、このように話のネタになるのでしょうが……。

美浦編集局 宇土秀顕

宇土秀顕(編集担当)
昭和37年10月16日生、東京都出身、茨城県稲敷市在住、A型。
昭和61年入社。内勤の裏方業務が中心なので、週刊誌や当日版紙面に登場することは少ない。趣味は山歩きとメダカの飼育。
人間、持久力よりもバランス感覚が先に衰えるのだなあ……。悲しいかな、そんなことを感じるようになってきた今日このごろです。