中7週のトライアル(坂井直樹)

 こんにちは、キャリア20年目を迎えました、栗東の坂井です。

 週刊誌上で関西圏の重賞の過去10年の傾向を担当してずいぶんと経ちました。たぶん10年は超えたと思います。勝ち馬一覧表が目の前で見たレースで埋まる感覚は何とも不思議なものです。

 さて、そんなことをずっとやっていると傾向の変化を感じることがあります。今週の週刊競馬ブックの桜花賞特集「広角視点」の欄でも少し触れましたが、桜花賞のステップがここ数年でずいぶんと変わった印象を受けています。

 社内DBで調べられる1981年まで遡ってみると、桜花賞勝ち馬42頭のうち、前走がトライアルではなかった馬は9頭でした(カッコ内は前走)。

1989年 シャダイカグラ(ペガサスS)
2004年 ダンスインザムード(フラワーC)
2006年 キストゥヘヴン(フラワーC)
2011年 マルセリーナ(エルフィンS)
2018年 アーモンドアイ(シンザン記念)
2019年 グランアレグリア(朝日杯FS)
2020年 デアリングタクト(エルフィンS)
2021年 ソダシ(阪神JF)
2022年 スターズオンアース(クイーンC)

 ここ5年は立て続けに非トライアル組。2011年は震災の影響を多分に受けているので参考外かもしれませんが、それでも2006年までは非トライアル組でも長くてせいぜい中4週程度だったレース間隔が、以降は前走から約2か月、あるいはそれ以上レースが開いている馬がずらっと並びました。

 似たようなことは皐月賞でも窺えます。

1981年 カツトップエース(バイオレット賞)
1988年 ヤエノムテキ(毎日杯)
1990年 ハクタイセイ(きさらぎ賞)
1999年 テイエムオペラオー(毎日杯)
2012年 ゴールドシップ(共同通信杯)
2014年 イスラボニータ(共同通信杯)
2015年 ドゥラメンテ(共同通信杯)
2016年 ディーマジェスティ(共同通信杯)
2017年 アルアイン(毎日杯)
2019年 サートゥルナーリア(ホープフルS)
2020年 コントレイル(ホープフルS)
2021年 エフフォーリア(共同通信杯)
2022年 ジオグリフ(共同通信杯)

 こちらも傾向の変化が出始めたのが2012年あたり。共同通信杯が中8週なので、やはり2か月かそれ以上のレース間隔が主流になっています。皐月賞の場合、非トライアルのなかでも共同通信杯かホープフルSかといった具合に偏りがあるので、特に共同通信杯組はそれだけで売れる要素となりつつあります。

 先へ向けて気になるのは、その皐月賞における共同通信杯のような立ち位置になりうるレースは桜花賞ではどこなのか。私はそれをクイーンCに求めてみたいと思っています。昨年、スターズオンアースがクイーンCから臨んで桜花賞馬となりました。長年、臨戦馬が桜花賞を勝てなかったクイーンCからついに…とデータ班的には実に大きな衝撃でした。中7週のレース間隔は今のトレンドにぴったり。今年ここから臨む馬たちがどんな走りを見せるのか、こんな側面から注目してみます。

栗東編集局 坂井直樹

坂井直樹(調教・編集担当)
昭和56年10月31日生 福岡県出身 O型
 クイーンC出走馬が間にもうひと叩きして桜花賞制覇、というパターンはありはするのですが、それでも1986年の三冠馬メジロラモーヌや、2017年のレーヌミノルなど数える程度。とにかく「クイーンCに使うと桜花賞は勝てない」と言えるくらいに相性が悪かったのです。直行だとなおさらで、1976年、まだ中山1600mで行われていた時期にテイタニヤが勝って以来、長らく勝ち馬が出ていませんでした。時代とともに、そんな流れも変わるのかもしれません。