もっと光を(坂井直樹)

 こんにちは、栗東の坂井です。

 先週末に顕彰馬選定投票が締め切られました。私は2018年から選定投票にかかわらせていただいています。18、19年の投票内容は手元に残していないのですが、20年から昨年までの3年の投票内容は残していて、そのあたりは昨年の当コラムで触れましたので、そちらをご覧ください。

 ルールは変わらず記者ひとり4票持ち、1頭に対して投じられる票は1票で、「該当馬なし」の意思表示をすることで0~4頭への投票ができます。投票対象は平成14年4月1日~令和4年3月31日に中央競馬の競走馬登録を抹消された馬。昨年で競走馬登録抹消から20年が経過したことで、毎年投票していたステイゴールドが選定対象から外れてしまったこと、そして毎年のことですが、新たに選定対象となった馬がたくさんいること、そのなかで手持ちの4票をどう振り分けるか、が今回課せられたお仕事です。

 さて今年、私は以下の4頭に投票しました。

アーモンドアイ
キングカメハメハ
コントレイル
マルシュロレーヌ
(50音順)

 昨年も述べましたが、投票していないからといって顕彰馬にふさわしくないと思っているわけではありません。昨年投票したモーリスら昨年の時点で選定対象だった馬たちはもちろん、今年から選定対象となったなかにもグランアレグリアやクロノジェネシス、ラヴズオンリーユーといったあたりには一定の支持があるでしょう。

 今年私が投票した4頭についても、どの馬をとっても特段の説明は必要ないと思いつつ、あえて触れておくべきはマルシュロレーヌだろうと推測しますので、私なりの理由をここで述べておくことにします。

 改めて顕彰馬選定基準をおさらいしておきましょう。

中央競馬の競走馬登録を受けていた馬で、
①競走成績が特に優秀であると認められる馬
②競走成績が優秀であって、種牡馬又は繁殖牝馬としてその産駒の競走成績が特に優秀であると認められる馬
③その他、中央競馬の発展に特に貢献があったと認められる馬
のいずれかに該当し、かつ平成14年4月1日~令和4年3月31日に中央競馬の競走馬登録を抹消された馬。

 「日本調教馬初の北米ダートGⅠ制覇、それも北米最高峰のブリーダーズC」なら、GⅠ勝ちがブリーダーズCディスタフのみだとしても、十分に①を満たすと私は捉えています。ただ、それ以外にJRAで重賞どころかオープン勝ちすらないという実績から、理解を得られない向きがあるかもしれません。

 ③ならどうでしょう。たとえばケンタッキーダービーに、今年は過去最多の日本馬3頭が遠征しました。今回の快挙も、遠征頭数が増えるきっかけのひとつではあったでしょう。幾度となくはね返されてきた、戦いに行くことすらも選択肢に入らなかったかもしれない舞台に遠征しようという意欲を抱かせた意義は大きいと考えます。遠征機会が増えれば、日本のダート競馬全体をさらに盛り上げることもできるでしょう。マルシュロレーヌが顕彰馬にふさわしいと考える理由はここにもあります。

 今年、顕彰馬に選定される馬が出るかどうかはまだわかりません。選定方法が従前と変わらないことを考えれば、漏れる馬は多く出ることでしょうし、選定馬が出なかったとしても大きな驚きはありません。選定方法を変える必要があるという考えは、今年も変わらず持っています。昨年も触れたひとりあたりの票数の上限を撤廃する、あるいは数年続けて一定の得票率を上回った場合に選出するのも方法のひとつです。過去の顕彰馬を振り返れば、三冠馬は自動的に選出されるシステムにするのも、決して悪くないでしょう。

 顕彰馬というシステムが、讃えられるべき功績をしっかりと讃え、それを競馬ファン内外に広められるものであり続けられるよう、その都度見直しながら柔軟に変えていく努力が広める側に求められているのではないかと毎年思うのです。

栗東編集局 坂井直樹

坂井直樹(調教・編集担当)
昭和56年10月31日生 福岡県出身 O型
 日本馬が凱旋門賞を制したら、その馬がどのような評価を受けるのだろうか、と想像してみました。おそらくはそれまでの実績に関係なく、大きく取り上げられ、評価され、こういった場でも当然のごとく名が挙がることでしょう。ブリーダーズCでの北米ダートGⅠ勝ちはそれと変わりない評価を受けるべき出来事。当てるべき光をちゃんと当てねばなりません。