高いハードルを越えよ(坂井直樹)

 こんにちは、栗東の坂井です。

 先週、ダービーが終わって、今週から2歳新馬戦がスタート。また新たな1年が始まります。1週目の新馬戦といえば昨年の本コラムで触れましたが、今年のダービーにも初日デビュー組から牝馬サトノレイナスが駒を進め、5着と健闘しました。やはり1週目の新馬戦勝ち馬は出世しますね。

 2歳新馬戦が始まるということは、一部の世代限定戦を除き、3歳馬は年長の古馬たちと一緒に走ることになります。障害戦にも3歳馬が混じり始めます。

 3歳の早い時期から障害練習を始めていた馬として私が思い出すのはテイエムトッパズレでしょうか。試験を初めて受けたのは3歳の4月27日ですからこれだけでもかなり早いのですが、当然それ以前から練習は始めていました。私の記憶が確かならば、年が明けて間もない時期には栗東トレセンのタスキコースにある障害を飛ばしていたように思います。

 比較的最近の例では、現役のハルキストンがそうでした。こちらはテイエムトッパズレよりも更に早く、障害試験を受けたのは3歳の4月19日。同馬は平地での初勝利が3月25日で、そこから試験を受けるまで間が1カ月も開いていません。というか、練習を始めたのが勝った翌週か翌々週かというタイミングで、「こないだ勝ったばっかりなのに?」と思いながら飛越練習を眺めていたことを思い出します。

 とはいえ、早くから練習を始めているからといって結果が伴うわけではないのも競馬。前述の2頭は障害試験を2度目の受験で合格。ハルキストンは3歳8月に障害戦初勝利を挙げましたが、これが障害4戦目でしたし、テイエムトッパズレは障害デビュー後はしばらく平地にも使われていて、これも障害戦は4戦目での勝ち上がり。ただ勝ったのは4歳4月と、練習を始めたタイミングからは1年以上を要しました。

 2012年以降の10年では3歳で障害デビューした馬は565頭。ちなみに4歳が860頭、5歳603頭、6歳473頭、7歳245頭、8歳以上119頭となっています。デビュー時期は3歳10月から4歳3月の期間がピーク。ただ3歳馬が障害デビュー戦で勝ち上がった例はこの期間に6例だけ。勝率にして実に1.1%ですから高いハードルと言えるでしょう。キャリア豊富な年長馬が相手ですから、時間を要すのは仕方ないのかもしれません。それは、最終的に出世した前述2頭が初勝利に4戦を要したところからも窺えます。

 さて、栗東では先週、3歳馬ニホンピロコールが障害試験を受けていました。早い段階で練習を始めていた3歳馬は他にも何頭か目にしてきましたが、今年の栗東で障害試験を受けた3歳馬は同馬が初めて。雨馬場もあって初回はタイムオーバーとなってしまいましたが、まだまだ先は長い。じっくり力をつけて、ゆくゆくは競馬場で活躍してくれることを願っています。

 

栗東編集局 坂井直樹

坂井直樹(調教・編集担当)
昭和56年10月31日生 福岡県出身 O型
2004年入社。入社間もない頃、ルポルタージュという馬がいました。障害飛越の練習で当初は飛ぶのが怖くて仕方ないといった形でまともに踏み切ることすらできませんでしたが、何度も何度も練習を積んで上達。デビューまでこぎつけ、感動したことを覚えています。結果的に障害戦で活躍することはできませんでしたが、平地に戻って2戦目で1000万2着。最近よく見る「障害練習の効果」は昔からあったんですね。